ロシアの横暴/第46回 プーチンを救った“燃える”モスクワ(2)
ここに「想像もしていなかった事態を利用して」転んでもただでは起きない、いかにもロシアらしいニューリッチたちの黒い噂が立ちのぼっている。
国家危機をチャンスに変える話である。あちこちで起きている火災のどさくさに紛れて、森に火をつけている、という。自分たちが違法に伐採し、売り飛ばしたことを隠蔽するためらしい。その上国家規模の大災害なので国家保障も狙っている、と。
憶測の域を出ないとはいえ、「連中ならやりかねない」というのが一般市民の正直なところだ。
そしてもう一人、火災を利用して名をあげている人物がいる。
「世論調査基金によると、火災が拡大していた8月1~12日にメドベージェフ大統領の支持率は52%から57%、プーチン首相も61%から64%まで上昇した。火災の死者が50人超、住居を失った人が3500人に達し、現行の中央集権体制が大規模災害に効率的に対処できない現実があらわになった中での支持率回復だ。『人々は、プーチン氏が消火に走って役人を叱責(しっせき)し、被災者に復興資金を約束する光景ばかりをテレビで見ている』」(8月20日付け産経新聞)
火災の被害に遭わずテレビを観ている人々はもちろん、遭った人ですら消防士を叱責する首相を見て感激に涙を流す国民性であることをよく知った上でのパフォーマンスであろう。
そういえばプーチン氏は下がり気味の支持率回復策か、次期大統領選の下地作りか、最近は派手な行動が目立つ。
「夏のニュース枯(が)れ時に注目を集めようとするロシアのプーチン首相のパフォーマンスが、ここ2、3年激しくなっている。水泳や乗馬を楽しむ筋骨隆々(りゅうりゅう)の体をメディアにさらす。昨年は世界最深のバイカル湖底まで小型潜水艇(せんすいてい)で行った。
今年は7月下旬、米国を退去処分となったロシアのスパイをねぎらう会に出て彼らと歌った後、ウクライナに行ってバイクショーに加わり、米ハーレーダビッドソンの三輪バイクで疾走(しっそう)した。」(9月3日付け朝日新聞)
「頼もしそう、強そう!」な指導者を演じることで支持率挽回をはかったつもりが、干ばつが広がっているときとあって「遊んでんじゃねえよ!」のブーイングが出始めた。そこでおきた森林火災である。これを利用しない手はない。
反ロシアで固まっているインターネットサイト「カフカスセンター」では「ロシアの悪事に対する神の裁き」としているが、どうやらプーチン氏にとっては「神の贈り物」になっているようだ。(川上なつ)
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