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2010年9月 9日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第39回“安全保障を脅かす”男が明らかにした米軍の真実

 今年7月末に民間団体ウィキリークス(Wikileaks)によって、アメリカ軍のアフガニスタン関連の機密資料7万5000点がネット公開された。アメリカでは歴史上最大の漏洩事件とまで言われ、公開から1ヵ月以上が経ってもメディアを騒がせ続けている。
 ウィキリークスはオーストラリア出身のコンピューター・プログラマー、ジュリアン・アサンジ氏が設立したNGO団体。08年には米軍戦闘ヘリコプターが民間人を銃撃する映像を公開し、一躍名を上げた。ウィキリークスはネット上の百科事典ウィキペディア(Wikipedia)に似たスタイルのホームページで、内部告発文章なら原則誰でも匿名で投稿することが可能だ。約10名程度の常駐ボランティアスタッフが在籍し、アサンジ氏によるとサーバーは情報保護法制の整備されたスウェーデンやベルギーに置かれているという。現在日本語を含めた9つの言語に対応している。言論の自由の無い中国や、不敬罪が施行されているタイからは接続が規制されている。

 アフガニスタン関連の機密文章はカブール・ウォー・ダイアリーという特設ページに置かれ、日にちや場所、事件の種類ごとに検索をかけることができ、月ごとの事件の件数をグラフ化して見ることもできるようになっている。ロケーションも事件ごとにGoogle Mapで表示される。
 私も自分が従軍していた時期の文章を調べてみたが、残念ながらその作戦についての文章は無かった。08年の3月に東部ホースト州で従軍した前線部隊は、私が3日の滞在で離れた後に攻撃を受けたと聞いた。全ての軍事行動が記載されている訳では無いようだ。
 公開された文章は軍隊内部でのみ通用する単語も多く使われており、多少読むのに苦労したが、読み進めていくと民間人への銃撃や拘束が日常的に行われているということが見えてくる。
 イギリスの新聞ガーディアンは「アフガニスタン戦争の失敗を衝撃的に描写する内容」と酷評している。

 文章はどれも淡々としている軍隊内の報告書に過ぎないが、その行間には人間、一人一人がいる。Detain(拘束)という項目の報告書では、その行間に武器を持った米兵に囲まれて連行される、怯えた男の顔が浮かんでくる。Killed in action(戦闘中死亡)の文字からは、体のどこかを吹き飛ばされた若い米兵の苦悶を浮かべた顔が浮かんでくる。
 同サイトで戦闘ヘリコプターが民間人を銃撃する映像をリークさせた米軍諜報機関の男性は現在情報漏えいの罪で軍に拘束されている。今回のアフガニスタンのリークを行った人物も相当の危険を覚悟で情報を持ち出したはずだ。現代においては情報はコンピューターで管理され、どこから漏れたかは時間をかければ間違いなく発覚する。ベトナム戦争の時のように紙束を抱えて運び出す苦労は無いが、身元が割れるリスクは格段に高いだろう。その人物の勇気に心から敬意を表したい。
 ウィキリークス代表のジュリアン・ユサンジ氏は英ガーディアン紙で情報の公開についてこう語っている。

 「優れたジャーナリズムは、本質的に物議を醸すものだ。権力者の横暴と戦うことこそ、優れたジャーナリズムの役目。そして権力というものは、挑戦されると決まって反発するものだ。つまり、物議を醸している以上、情報公開は良いことなのだ」

 現在にいたってもアメリカ政府とユサンジ氏は激しく言い争っている。先週には滞在中のアイスランドでセクハラ疑惑で逮捕されかけるも、急に容疑が取り下げられるという珍事があった。ユサンジ氏はアメリカ政府の陰謀と非難。国防総省のモレル報道官はばかげている、と一蹴。米政府は一貫して氏を「国家の安全保障を脅かした上、偏った見方をしている」と非難している。氏の「物議を醸す」という目的は達せられたわけだ。
 最も重要なのは今後、このリークされた膨大な情報をいかに整理し、今後に活かすかということだ。欧米メディアの注目ははすでに公開された資料そものものではなく、ユサンジ氏と米政府の批判合戦そのものに移っている。
 資料に載っている名も無き人々の声にこそ耳を傾け、そこから新しい事実を掘り出していかなければいけない。危険をおかし、情報をリークさせた人物がいる。彼または彼女は責任を果たした。それを読んでいくことは、我々市民の側の責任だろう。(白川徹)

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