冠婚葬祭ビジネスへの視線/終活ファッションショーに行ってきた!
7月31日、デセオ(NPO法人人生と死を考え、将来設計を実現する会)が主催した「終活ファッションショー~わたしが最後に着たい服~」に参加した。まずデセオ代表理事の司法書士・安田祥子氏が「終活のススメ」と題した、老いから葬儀・墓・供養・相続までをふくめたエンディングプランについて講演し、あとに一般人13名が人生の最期に着たい服をまとってウォーキングするというもの。大阪のいきいきエイジングセンター、300人収容のホールは半分ほどが埋まり、年齢層は幅広い。50代~シニアの人々が前の席をのきなみ陣取ったものの、後ろのほうにはゴスロリ風の女の子たちもいる。出演者の家族と思われる子連れの夫婦なども見えて、まさに老若男女が集まった。
まずは講演。司法書士の方と聞いていたが、出演者のうちの1人とばかり思っていた女性がさっそうと登壇したのでびっくり。なぜ見間違えたかって、鮮やかな青と水色が混ざり合った綺麗なドレスを着ていたからだ。彼女は「よく占い師と間違われるんですよ」と笑いながら快活に話をした。関西弁もまじって、親しみやすい印象が「司法書士」の堅いイメージを打ち破った。それどころか、このようなファッションショーまで主催してしまうのだから、そのパワーは計り知れない。
安田氏は講演の中で、葬儀の希望等について書きこむ「エンディングノート」の流行に触れ、しかしノートに向かってもなかなか書き出せない人が多い現状を語った。葬られ方の一部しか見ていないと、ノートは埋まらない。弔いといっても、葬儀・墓・供養・相続など様々な場面があるのに、「散骨してもらいたい」「葬式は必要ない」「墓はいらない」など一部分の希望しかなければ、それ自体をかなえるのが難しくなってしまう。一番の希望をかなえやすいように、周辺のパーツも整えていくべきだ。例えば「葬儀は必要ない」と書いたとする。加えて墓に関しての希望を一切書かなければ、菩提寺の墓に埋葬されることだろう。菩提寺の住職が理解ある場合は良いが、葬儀で受戒も与えなければ引導も渡していない故人の魂をそこで祀ることを是としないかもしれない。せめて戒名はつけなければならないかもしれない。弔いを全体の流れとして知っておかないと、トラブルになりやすいのだ。安田氏は「老、死、葬、墓、供養までのトータルデザインを考える」ことの重要性を訴えた。
さらに安田氏は「生前の意思決定をかなえてくれる人を見つけておくことの大事さ」を語った。いくら精密に死後のことを考えたとしても、本人がそれをすることはできない。血縁でも、生前契約システムでもよい。自分のプランを実行してくれる誰かが必要なのだ。「孤独死」「無縁死」が取りざたされている中、氏の言葉は胸に響いた。
第二部はいよいよファッションショーだ。自分が送られるときに着たい服を着て、流してほしい曲にあわせてウォーキングする。人生の中で思い出に残る写真を5枚だけ選び、それについての説明も加えるという趣向だ。
トップバッターは死とは無縁に思える、若々しい女の子だった。しかもチアリーダーの格好をしている。彼女は初めて振付をした曲だと言い、チアリーディングのパフォーマンスをした。会場内は手拍子に包まれ、死についてのイベントにもかかわらず大変はつらつとしていた。
次の出演者は70代男性で、奥様とカラオケでデュエットしている曲をかけながら登場。黒いTシャツには今までの職歴がプリントされている。3番手はサリーを着た女性で、「月の砂漠」にのって登場。写真を見ながら父親の思い出について語ると、思わず涙ぐんでいた。
さらにどう見ても50代には見えないパンクな衣装の女性、シャンソンをうたう女性、作務衣を着てMACのノートパソコンに礼拝する僧侶、女性牧師とユニークな面々で彩られていく中、トリに登場したのはウェディングドレスの75歳。ハワイアンにのって登場し、ウェディング・フラを踊った。ゆったりとした動きはとても優雅で、集団生前葬とでもいうべき企画なのに、生の横溢が感じられた。「いきいきした葬儀」って、矛盾が感じられていい。
一つだけ残念だったのは、せっかく本人から家族や伴侶へのメッセージが読まれる企画なのに、「遺族」ともいうべき当事者の参加が少なかったこと。葬儀はもちろん、死者だけのものではない。残される人が参列してはじめて葬儀であるといえるだろう。それに日頃は言えないことをつたい合えるチャンスでもあるのだから、もっとノリよくしてほしいなあと個人的には思った。死んだつもりの人と話すなんて、なかなかできないことですよ。(小松)
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