冠婚葬祭ビジネスへの視線/「墓じまい」もビジネスになりうる
お盆だから墓のことを考えましょうというわけではなく、いつも墓や葬式のことばかり考えている(こう書くと誤解が生じそうだが、商売柄、どうしてもそうなる)と、最近、新聞や雑誌に墓やら葬儀の特集が多い気がする。「週刊現代」「週刊ダイヤモンド」「宝島」「東京新聞」「朝日新聞」等々。ブーム云々だけでなく、読者がそういうことを考える年代にさしかかってるんだなと思うと購買層の高齢化っぷりに多少寂しくなる。
先日は朝日新聞に「墓じまい」についての取材記事があった。都市部に家を持つ息子は故郷に戻ってこないだろうと察した父親が、受け継いだ墓をバラす決心をするのだ。カロートの中にある先祖の骨を取り出し、散骨葬に参加する。のちは自分も散骨してくれるように、と息子に頼む。家制度の解体が招いている、墓の後継者不足。父親は生きているうちに始末をつけるため、先祖の骨を海に撒き墓地を解約する。それを「墓じまい」と称しているのが新鮮に感じられた。
お墓の引っ越し、つまり「改葬」は結構面倒だ。家族にしてみれば「ウチの先祖の骨を移すだけじゃん」と、何の気なしに取り出したくなってしまうかもしれないが、役所に行って改葬申請をしなければならない。現在の墓地管理者から埋葬証明書を発行してもらい、移転先の墓地管理者から受入証明書を発行してもらい、それを市町村役場に届けて改葬許可証を発行してもらい……と、3カ所で書類をもらわなければならない。その上、眠っている場所がお寺であればお骨を取り出す時に何らかの儀式が必要かもしれず、こだわりある住職からの反対を受けるかもしれず。思い立って「勝手に・すぐに」は出来ないやっかいごとだ。散骨や自宅保管の場合は改葬にはあたらないので移転先の受入証明書は必要ないが、これも自治体によって解釈が分かれるところのようだ。お墓から離れた人がいざ動こうと思っても、何回かは往復が必要になってしまう改葬。この土地に住むのは自分の代で終わりだ、と自覚した時点から準備を進めておくのは、確かに賢い。
散骨をはじめとして、墓標のかわりに木を植えたり巨木に沿って遺骨を埋める「樹木葬」、バルーンの中に遺骨を入れて打ち上げる「バルーン葬」、オブジェに遺骨を込める手元供養など、お骨の行き先は墓以外にたくさん広がっている。ということは残された墓の始末もつけなくちゃならないんだな、という当たり前の事実を今回、新発見。残される子どもに迷惑かけないように葬式のダンドリをつけておこう、と「終活」する人が増えているが、もうちょっと全体的に「始末をつける」ことを考えるのが大事になってくるだろうと思われる。するとそこにプチプチと需要が生まれるわけで、葬儀業界は幅広くそれらを拾い集めることが今後の課題となるだろう。葬儀や供養ばかりでなく、トータルなエンディングプランの助け手となることが求められてくる。(小松)
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コメント
いつも参考にしております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
投稿: 履歴書の添え状 | 2010年8月15日 (日) 16時11分