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2010年7月22日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第37回 お呼ばれしたら王様気分で!?

 ホスピタリティーと言うと少し大袈裟だけれど、客人をもてなすことはどの文化においても大事なことだと思う。日本の富豪が文化人を屋敷に逗留させることは、一種のステータスだった。富豪が上等の客を迎えるということは、彼らの周りの人間に対する力の誇示も意味する。夏目漱石がどこどこの屋敷に厄介になった。森鴎外がどこどこのやしきに泊った。どれも結構な名誉だ。
 けれど、やっぱり下心が見え隠れするし、もし屋敷の主人が文学に理解のある人だとしても、どこかで人に自慢したいんじゃないか、なんて思ってしまうのが現代人の下賤な心だ。そんないじましい自分を蹴飛ばしてくれたのは、アフガニスタンのある“屋敷”でのひと時だった。

 アフガニスタン東部最大の街、ジャララバードに滞在した時、私はカブールから現地での有力者の車に同乗させてもらった。マホメットさんという方で、40前後。若き日のトム・ハンクスがひげを生やしたらこうなるのでは、という顔をしている。
 私はタリバンとの接見を企画しており、彼がそのコーディネーター役だった。わたしはジャララバードではホテルに滞在する予定だったが、彼はかたくなにジャララバード滞在中彼の家へ泊まるように勧めた。
 アフガニスタンには「客は神からの送りもの」という言葉があるくらいに、客人をもてなす風習がある。けれど、さすがにそんなに長く滞在するのは失礼だ。気も使うし、私は好意を辞したが、マホメット氏はどうしても泊っていけと言う。私は彼の押しに負けて結局数日ということで泊めてもらうことにした。

 マホメット氏の家は地元の名士ということもあり、アフガニスタンではかなり立派な門構えをした家だった。門をくぐると、広々とした庭が広がっていて、その先に12畳程度の平屋がある。床にはヘラート産だという細かい模様を編みこんだ巨大な絨毯が敷いてある。アフガニスタンには輸入品以外工業製品というものが無い。この絨毯も女たちが何年もかけて丁寧に編みこんだものだろう。
 壁の四方の隅には細長い絹で作られたマットと円筒型の枕が置かれている。表面には手の込んだ装飾が金色の糸で縫いこまれている。
 壁にはアフガニスタンの殆どの家庭がしているように、コーランの一節が額に入れて飾られている。

 マホメット氏はマットの上に寝転がって楽にしてくれと言う。いやいや、泊めてもらっておいて寝転がるというのも失礼だから、と返すと、彼は私の体を持って足払いの要領でマットの上に倒した。
「白川さん。アフガニスタンでは客が一番偉いのです。あなたが楽にしてくださると、私たちもくつろぐことができます。どうか、王様にでもなった気分でいてください」(白川徹)

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