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2010年6月 1日 (火)

鎌田慧の現代を斬る/特別編 スポーツ支配に手を伸ばすトヨタ

 トヨタは71年ぶりの赤字から、たった1年での黒字回復となった。この業績について、豊田章男社長は「まだ嵐の中にいるが、遠くに晴れ間も見える」(『毎日新聞』10年5月15日)と語った。
 しかし前期から6000億円以上を「カイゼン」させた手法は、相も変わらずのものだった。下請いじめの部品調達の見直しや労働者いじめの人件費削減によってである。3700億円の販売減、円高の影響による3200億円もの減収を1兆円もの合理化でカバーしたのだから尋常ではない。

 そうしたなか、愛知県労働組合総連合が主催する「第26回トヨタシンポジウム」で、名城大学の谷江武士教授は、09年3月期のトヨタの内部保留が13兆円にのぼることを明らかにした上で、次のように語っている。
「内部保留を活用して、賃金に回したり、下請け単価の切り下げをやめたりすることで景気の回復につながる。なぜそれをやらないのか」(『朝日新聞』10年5月17日)
 これは当然の主張だ。誰もが幸せになることなく、ただただ企業だけが肥え太って、どうするというのか。
 米国での民事訴訟の解決もこれからで、米国では10億ドル(約930億円)もの和解金が必要だとも報じられた。それに急加速に絡む事故で死亡した89人の補償問題もある。国内最大の田原工場でも3本のうち2本の生産ラインを、ことし11月末までに統合する計画が進んでいる。生産能力に販売が追いつかないのだ。販売を支えてきたハイブリッド車プリウスの新車効果もそろそろ切れ、エコカー補助金も9月末までの新車登録までとなっている。
 こうしたマイナス要因を、すべてコストカットで乗り切るなど、もう企業倫理としては許されない。ひたすらため込んだ内部保留を、いますぐ吐き出すべきだ。

 トヨタでもう一つ気になったニュースは、日本体育協会の次期会長に張富士夫トヨタ自動車会長に内定したことだ。「スポーツ界に精通し、政財界へのパイプを持つことなど条件に人選」(『毎日新聞』10年5月12日)という。
 前任がサメ頭の森喜朗前首相だったことを考えれば、ただの名誉職とも思えるが、またトヨタかとも思う。トヨタのスポーツへの取り組みは、必ずしも褒められたものではない。F1ではホンダから日本GPの開催を強引にもぎ取たものの、初年度は大会運営に失敗してブーイングの嵐。次年度やっとまともな開催ができたものの、翌年には撤退を発表。
 柔道の谷亮子選手やフィギュアスケートの安藤美姫選手など、オリンピックをにらんだ選手の抱え込みも激しい。外から見ている限り、本当にスポーツそのものの振興を考えているかどうか。その谷選手は、小沢チルドレンの一人に成り下がりそうだ。

 米国でのリコール問題すら解決していないのに、トヨタがスポーツにまでしゃしゃりでてくるのには違和感がある。「政財界へのパイプ」として「活躍」する前に、自社の労働者や下請の声を真剣に聴くべきだ。

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