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2010年5月28日 (金)

ロシアの横暴/第39回 ポーランド大統領の死に「暗殺説」がつきまとう理由(2)

 一方、情報提供収集とも無制限な世界であるインターネット上には反ロシアあり、親ロシアあり、種々雑多の情報が飛び交っている。
 日本の報道ではほとんどふれられていないのが、事故機が着陸しようとして墜落したのはスモレンスク空港ではなく、近くの軍用飛行場だったという点である。ここから次のような憶測が飛び出した。
【管制官のロシア語原因説】
 軍用飛行場はロシア軍専用であるからして、管制官がロシア語しか使わず(使えず)、パイロットはロシア語がわからず墜落に至った。いわく、管制官はロシア軍専用だからロシア語で指示を出すのだそうだ。しかしたとえ軍用飛行場でも管制は英語だし、大統領機(ソ連製ツポレフ)のパイロットがロシア語をできないはずはない。

 パイロットが強行着陸をした、という日本での報道を「なるほど」と思わせる意見があった。
【大統領傲慢説】
 パイロットが強行着陸せざるを得なかったのはカチンスキ大統領が頑固で傲慢なので逆らえなかったからだ。大統領機のパイロットは管制官よりも大統領の命令に従わなければならない。
 これはなかなか説得力がある。大統領は社会主義政権下で反体制運動をやって秘密警察に弾圧された経緯があり、その敵討ちか、今度は当時秘密警察に協力したと思われる人物を審査する「非共産化法」なるものを制定した。やり方が独裁者的でスターリンによく似ている。

 ほかにふざけているわけでもないだろうが、こんな話もある。
【携帯電話原因説】
 携帯電話による機器エラー。事故直前に大統領夫人の付き人と電話で交信したという人の証言である。
 旧ソ連傘下にある国はどこも航空機内の携帯電話に鷹揚である。離着陸前には必ず「携帯電話の電源はお切り下さい」というアナウンスが入るが、日本の電車の乗客と同じく平気の平左である。「もうすぐ離陸するから」とか、「ちゃんと出迎えに来てね」といった会話があちこちから聞こえてくるが乗務員は気にも留めない。
 しかしだからといって携帯電話によるエラーで墜落に至った、とは考えにくい。これらの国のパイロットは機内での携帯使用に慣れきっているし、旧型ソ連製飛行機は機器も旧型で、携帯電話の影響を受けにくいからだ。

 インターネット上で飛び交うどうみても憶測の情報は「やっぱりテロか暗殺のにおいがする」ことで大体一致している。まるで日本のワイドショーみたいに、「管制に詳しい退役軍人の証言」だとか「現役管制官の匿名コメント」など、あとからあとから並べ立てる。

 その陰謀説として主なものは次の2つ。
【ウソの天候不良説】
スモレンスクに霧などなかった。あったとしても着陸不能なほどのことはない。大体この霧とやらは人工霧だ。
【反大統領主犯説】
 ポーランド反大統領派が仕組んだ事故だ。その証拠に大統領と仲の悪い親ロシア派首相は乗っていない。カチンの森追悼式典に首相が参加しないはずはない。たしかに首相は4月7日のロシア政府主催の追悼式典に出席済みだが、肝心の大統領はこの式典に出席を希望していたにもかかわらず呼ばれなかった。そこでカチンスキ大統領主導で独自の式典を計画し、事故に遭った。式典そのものがロシアへのあてこすりと見られていた。
 故にこの事故は首相派が仕組んだ暗殺計画である。

 果てはロシアのプーチン首相とポーランドのトゥスク首相はとても仲良しだというので、両国の首相が共同で企てた暗殺だという説まで出てきた。(カチンスキ、プーチン、トゥスクともに反共で一致しているのに、カチンスキだけが強烈な反ロシアである)
 これらの記事を読んでいくとバカバカしい、と思いながらも結構「そうかも知れない」という気になってくる。(川上なつ) 

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