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2010年5月22日 (土)

ロシアの横暴/第38回 ポーランド大統領の死に「暗殺説」がつきまとう理由(1)

 ポーランド政府関係者が搭乗した大統領専用機がロシア西部スモレンスク空港付近で墜落し、全員が死亡したのは4月10日のことである。小国とはいえ、大統領機が墜落して、政府要人が多数死亡したのだから、世界的なニュースになるかと思っていたら、「天候不良(濃霧)のため管制官は他の空港に誘導したがパイロットがこれを無視して着陸を強行したのが原因」というヘッドラインニュースで終わってしまった。

 当事国のロシアとポーランドで大騒ぎになるのは当然だが、ポーランドと縁の深いはずのEUや米国あたりの反応はいたって静かなものである。ポーランドは数年前念願のEU入りを果たし、NATOにも加盟し、最近では米国のMD(ミサイル防衛)配備の話もあった。事故で死亡したカチンスキ大統領はEUにもMDにも難色を示していたといわれているが、それでもこの大事故に対する西ヨーロッパと米国の傍観者的な立場は不思議である。EUはギリシャ危機でそれどころじゃないといえばそれまでだが。
 その上何の因果か、ポーランド大統領国葬の日にはアイルランドの火山灰の影響でヨーロッパの飛行機は軒並み欠航となり、EU主要諸国の首脳はほとんど参列できなかった。
 日本での報道も静かなもので、事故の調査や究明よりもロシアの対応に焦点を当てているので事故に遭ったのはどっちの国かと聞き返したくなる。

 例えばロシア領内でポーランド大統領機を墜落させてしまったことにロシア政府がひどく気をつかっている、という記事がある。せっかくの両国の雪解けムードに水をさすことになりはしないかと心配しているというものだ。ロシアに入国する遺族関係者のビザをあっという間に出したとか、メドベージェフ自ら弔問に訪れたとか、プーチンが出棺を見送ったとか、たしかに「お詫び」とか「配慮」など一度もしたことがないソ連・ロシアにしてはびっくりするような対応である。なんと、ポーランド機の墜落事故なのにロシアの「服喪の日」に設定することまでやってのけた。
 その結果、ロシアがあまりにもよくやってくれるのでポーランド人も感激しているという記事を書いている新聞もあった。

「ポーランドでは『プーチン氏は首相としてではなく、ただの人間として振る舞った』との声も出た。現地紙は『逆説的だが、(事故は)ロシア、ポーランド両国をこれまでになく接近させる機会になった』との論評を掲載した」(4月15日 産経新聞)
「ロシア政府が遺族受け入れのために用意したモスクワ市内のホテルには、ポーランドから100人以上の関係者が到着した。両国の専門家は遺体の身元確認を合同で進めており、ポーランドのコパチ保健相は『ロシア側の専門家は熱心に作業を進めている。ロシア政府に感謝したい」と述べた。両国は事故原因の究明も合同で行う見通しだ』」(4月13日 産経新聞)

 日本の報道はこれらの情報をどこから仕入れたがわからないが、外国メディアのロシア領内での自由な取材はきびしく制限されている以上、ロシアの公式報道に頼らざるを得ないだろう。ロシア発の報道に拾われることのないポーランド庶民の感情とはかけ離れているのではなかろうか。(川上なつ) 

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