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2010年5月27日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第35回 米国からカネをもらうタリバン!(2)

 現地のバフタル・ニュース・エージェンシーのムスタファ・アブリー氏に話を聞いた。バフタルはアフガニスタンの新聞4紙に記事を配信し、全ての州に支局を置いている。ムスタファ氏は主に政治関連を扱っている記者だ。
 現地の情報省のオフィスでムスタファ氏に会い、話を聞いた。彼は「俺はジャーナリストとして、真実を話す。外国人は誰も知らないことだぜ」と得意げに話す。
「君はタリバンのことを知りたい。それならバックグラウンドをよく知らなければならない。タリバンをコントロールしているのは実はアメリカだ」
 この手の話は以前カブールの高校で生徒たちから聞いた。まさか現役の記者から出てくるとは思わなかった。
「タリバンには2つのグループがある。一つは宗教的なグループだ。外国人を殺せば天国に行けると信じている連中。もう一つはアメリカから金をもらって戦っている連中だ。後者の方が8割だ」

 どうしてアメリカがタリバンを雇わなければならないのだろう?
「アメリカはアフガニスタンに駐留する大義名分が欲しんだよ。戦いが無ければ駐留する理由がなくなるだろう。だから、アメリカはタリバンを使って問題を起こさせているんだよ」
 だけど、どうしてそこまでするのだろう?
「アメリカはイランへの攻撃を考えている。その橋頭堡にしたいのさ。オバマは嘘つきだ。奴は軍を撤退させると言いながら、部隊を増派した。第一、タリバンを創設したのはパキスタンの諜報機関だ。その諜報機関に金を出していたのはイギリスとアメリカだ。全部アメリカの仕組んだ通りだ」

 その考え方は君たち記者の間では一般的なんだろうか?
「教育を受けた人間ならみんなそう思っている。アフガン政府の役人だってそうだ。アメリカもタリバンも同じ穴のむじなだ」
 試しにその辺の人間を捕まえて、同じ意見かと聞いてみた。みんなそうだと言う。自分の通訳にも尋ねてみる。彼はつい最近までUNDPで働いていた。彼も同じ意見だ。
 これまでの経験から言って、この手のアメリカ陰謀説は広くカブールで流布しているようだ。けれど、カブールの外では同じような意見を聞いたことが無い。地方に行けばそれに従いタリバンの影響力も増す。「タリバンはいい人たちだ」と話す人も少なくない。タリバンはカブール以外の地方で燃料や食料の配給など、社会事業もこなしている。カブールと違い、地方ではタリバンを含んだところで社会が構成されている。

 カブールは基本的に地方とは隔絶された、特殊な地域だ。海外から大量の援助資金が流れ込むため、基本的に海外とのやりとりで社会が回っている。だから英語教育も盛んだ。「いい生活がしたいなら英語を学べ」これが若い世代の合言葉だ。
 カブールの人間にとっては、自分たちの国に攻撃をしかけたアメリカも、たびたび市内で自爆攻撃をしかけるタリバンも同様に邪魔ものだ。アメリカがタリバンを支援している、という図式はカブール人にとって同時に二つの邪魔者を悪者にできる、一番痛快な流言なのだろう。

 もちろん、ムスタファ氏のアメリカ・タリバン陰謀説も完全に無いわけではないが、やはりとんでも説の一つだろう。驚いたのは現役の記者たちからその話が出てきたことだ。けれど、バフタルが記事を配信する英字新聞「カブール・タイムス」を読んでみてもその手の話には一切触れていない。紙面はとにかく淡々と物事を伝えている、という印象だ。
 Editorial(社説)も退屈すぎるくらいに無難にまとまっている。

 戦地では往々にしてあることだが、アフガニスタンでは本音と建前が上手に使い分けられる。もし、ムスタファ氏の話していたことが彼の本音で、新聞に書かれていることが建前だとしたら。そう考えると明るい未来予想図というのはなかなか見えてこない。
 ムスタファ氏には悪びれた様子はない。けれど、その分だけ不安ではあるのだけれど。(白川徹)

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