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2010年5月29日 (土)

鎌田慧の現代を斬る/第143回 ゾンビのごとく復活した辺野古案の裏に新軍港!

 普天間飛行場問題の決着とは、結局、米国のいいなりになることだった。日米両政府の共同声明では移設先を辺野古崎周辺、とした。最悪の選択だ。「日米合意」といいながら、閣内でも国内でも、なんら合意されていない。米政府に押し切られただけだ。
 この問題は、辺野古での建設がムリという認識からスタートし、首相のしめした基本方針は「最低でも県外」だった。ところが政権発足から8ヵ月間、各候補地を浮遊したあげくにブーメランのように、あるいはゾンビのように辺野古周辺に戻ってきたのである。それも反対している、連立三党の社民党党首を閣内追放する粛清である。

 そもそも辺野古への移設は、これまでも指摘してきた通り「移設」ではなく、新基地の建設であり増強である。その本質が沖縄県民に周知事実となった現在、もはや新基地は1センチたりともいらないというのが沖縄県民のホンネである。
 辺野古に「移設」するといわれてから、すでに13年がたった。しかし住民の強い抵抗により杭一本打てないでいる。また年々高まる環境意識も、ジュゴンのエサ場である同地への建設阻止を後押しした。

 こうした状況をわかってうえで、県外移設を主張して成立した鳩山内閣が、こともあろうに辺野古計画に舞い戻ろうとしているのは愚策であり、裏切りだ。しかし、その実現性はかなり困難だ。4月25日の9万人県民大会と普天間包囲人間の鎖の熱気を受けて、辺野古への移設反対闘争は、いままでよりもさらに激しくなることが予想されている。それを強行突破する大義名分は、もはや政府にない。
 前回でも書いた通り、沖縄に海兵隊を置く戦略的な理由はない。戦地から火薬まみれで帰ってきた兵士たちの慰安の場所というのが、沖縄の実情である。
 09年11月15日の『琉球新報』では、98年3月の日米非公式協議で、当時の国防次官補代理だったキャンベル氏が「沖縄以外にそのような場所があれば、われわれは瞬時に移駐を決断するであろう」と海兵隊の移設について語った、と報じている。

 これは沖縄の海兵隊に人数からもみてもあきらかなことだ。すでに海兵隊のグアムへの移設準備は進んでいる。日本政府は総額で7000億円のカネを支払うことを決定しているし、2009年度の予算では370億円がグアム島の施設建設費として計上された。最終的には海兵隊員8000人と、その家族9000人が移転することになっている。2008年の米国側の報告によれば、グアム移転後に沖縄に残る海兵隊は、わずか1800人でしかない。上陸部隊である1800人の海兵隊が、首相の語った「抑止力」にならないことはあきらかだ。

 それでも米国が辺野古に固執しているのには、辺野古北にある東村の高江地区に、ヘリコプターが離着陸する円形のヘリパッドが建設され、そこでの訓練がおこなわれようとしているからだ。これにたいする住民の反対運動もますます強まっている。

 鳩山首相と米軍と閣内の米政府との密通者、そして米政府のチョーチン持ちマスコミ人による米政府屈服政策は、沖縄にむけた行軍の開始として、沖縄の人たちに受け止められるだろう。5月4日に鳩山首相と会談した稲嶺進名護市長は、「こんなに小さな島に、これ以上の基地ができるというのは限度を超えている。ここに新しい基地をもってくるということになると、沖縄にたいする一つの差別ではないか」と語っている。2度目の会談では「裏切り」といった。地方自治体の首長が、首相にむかって「差別」、「裏切り」というむきだしの言葉を使うなど、よほどのことである。
 また稲嶺市長は長く市の職員を務めていたこともあり、わたしの取材に対しても言葉遣いが慎重な人物であった。それでも「差別」「裏切り」といわざるを得なかったところに沖縄の基地問題の本質がある。戦前・戦後の日本政府の沖縄にたいする歴史が、首相との会談で噴出したといえる。

 戦争中は本土防衛の防波堤として最前線となり、敗戦直後は天皇制維持のために72年まで米国軍政下におかれ、そのあとのようやくの「本土復帰」のあとは、日本の基地の75%を引き受けさせられ、日本政府公認で核兵器まで置かれていた。朝鮮戦争をきっかけとしてはじまった日本の繁栄は、沖縄の犠牲のもとに成り立っていたのである。
 そして今度は、普天間基地返還を名目に、辺野古にまったく新しい巨大な基地をつくろうとしている。辺野古の航空基地は、大浦湾の深い海を使っての巨大軍港建設とセットも構想されている、との噂も絶えない。しかも、この基地は米軍と自衛隊の併用まで検討されている。
 先述した日米非公式協議で、キャンベル国防次官補代理は、「日本政府が、沖縄以外で海兵隊のプレゼンスを支える基盤を米側に提供することが政治的に不可能だ、ということだろう」とも指摘した。日本政府が沖縄に犠牲を押しつけていることを、米政府から指摘された格好である。

 自公政権は、すべてごもっともと米国の軍事的要求を呑みつづけてきた。その弱腰を見透かされて米国が恫喝してきたし、日本の新聞社や評論家も米国を怒らすなとキャンペーンを張ってきた。政権交代を機に、その屈辱から脱却すべきだったのだ。
 沖縄基地問題の根本は日米安保条約にある。日米安保も締結から50年もたったのだから、日本が要求して米軍の駐留を解消すべき方向に動きだすべきだし、そうした要求を掲げる運動を全国的に展開する必要がある。(談)

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