ロシアの横暴/第37回公衆トイレが打ち手の小槌に!(2)
アル中対策に名を借りてウオッカを大幅値上げして、税収増をねらうのもひどい話だが、有料トイレで庶民から絞り上げるとは呆れた話である。ウオッカは必需品ではないから、ガマンしようと思えばガマンできる。しかしトイレはそうはいかない。10ルーブルがなければその辺ですませる方法もあるが、もし見つかれば有料トイレ料金よりももっとすごい罰金が待っている。
公衆トイレはソ連時代からあることはあった。ひどく数が少なく、しかも汚かった。だが無料だった。都心のやや清潔な公衆トイレには管理人がいて、こまめに掃除したり、タオルを出したりしてくれるのでチップを出す人もいたが、それとて任意だった。有料トイレが発生したのは、例の経済改革のころと思われる。だれでもビジネスチャンスというので、目端の利く者がトイレ不足にヒントを得て考案したにちがいない。その稼ぎ度に目をつけた国家が公共施設のトイレをすべて有料化し、すでにある「私立トイレ」も公立化したようだ。まさしく「安定した収入源」である。
現在のロシアのトイレビジネスの料金徴収体系はどうなっているか知る由もないが、徴収した料金が窓口料金係の個人収入にならないことは確かである。駅舎などは国営鉄道に属する国家事業だから、国庫に納入されるはずだ。もっとも「何人のお客さまがみえたか」カウントできないから、一部分をくすねることは可能ではある。それもほどほどにしておかないと、「ノルマ未達成」のおとがめをくらうことなる。
こうして集めたトイレ料金は取りっぱぐれのない、確実な財源としてソチ五輪の建設資金に計上されているような気さえしてくる。広大なロシアの全ての地域から上がってくる公衆トイレ利用料金は膨大な金額になるはずだからだ。
おかしなことに旧ソ連構成国アゼルバイジャンでも似たようなことをやっている。こちらは0.2マナト約25円である。ロシアと同じようにひどく汚い。駅にある古いのも、新設の公園に最近設置されたのも(こちらはけっこう清潔だった)同一料金であるところがロシアとちがうが、給与水準は似たようなものだから、庶民にとって不当に高い料金であることには変わりない。
ちなみに都市交通のバスは0.2マナトで、地下鉄は0.1マナトである。それに主食のパンが0.3マナトで、他の一般物価に比べればかなり安い。そんなところまでロシアと同じだ。ソ連がいやでロシアに主導されるのがいやで悲願の独立を果たし、最近ではロシア語の排斥すら起こっているというのに、ソ連的ものの見方考え方から抜けられないのだろうか。不思議な現象である。(川上なつ)
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