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2010年4月13日 (火)

ロシアの横暴/第36回公衆トイレが打ち手の小槌に!(1)

 国家が財源不足になったら何をするだろうか?
 いわゆる先進国によくある制度として消費税がある。酒税やタバコ税は一般諸費税よりは高く設定できるが、世界的には禁煙の方向になっているのにそれを国家が先頭をきって奨励するわけにはいかない。その点消費税は便利な打ち出の小槌といえる。どんなことがあっても物を買わないわけにはいかないからだ。特に日用品食料品にもまんべんなく課税される現在の日本の消費税制度は全国民の90%を占める庶民の懐から確実に税金を巻き上げてくれるとても性能の良い「打ち出の小槌」である。

 ところがロシアには打ち出の小槌の上をゆく、有料公衆トイレがある。ロシアの公的な建物のうち、空港内にある公衆トイレ以外はほとんどすべて有料である。料金は一定ではないが、10ルーブルから20ルーブルとなっている。10とか20とかきくと、10円20円のような気がしてしまうが、ドル換算すると1ドル約30ルーブルだから1回30円見当、3回公衆トイレを利用すると1ドル以上かかることになる。なんだ1日1ドルか、だが、ロシアの給与水準からみればとんでもない値段である。モスクワですらビジネスで当たって荒稼ぎしている者以外、いわゆる公務員、会社員で1000ドル以上の給与を手にする者は限られている。地方に行くと200ドル(6000ルーブル)未満もざらだし、年金生活者はさらにひどい。失業者もあふれている。そこに公衆トイレ利用料が10ルーブルである。

 値段もさることながら、次の問題はそのきたなさ加減である。
 公衆トイレは捜さなくても悪臭が漂っていることからわかるほどで、ひどく汚い。水洗なのに水が出ないところ、装置が壊れているところ、ドアが閉まらないもの、かぎはあるけどポイントが合わなくて閉まらないもの、そもそもドアがはずれてしまっているものなど、行かなくてもいいのなら絶対に行きたくないところだ。

 ロシア南部のある鉄道駅にある公衆トイレを利用した。まあ、まあ我慢のできる範囲の清潔度だった。しかし、20ルーブルである。60円だ。連れの女性が料金を払ってくれるのでとにかく中に入ろうとすると受付の女性が「ちょっとあんた、どこへ行くのよ!」と叫ぶ。連れの女性が、彼女は日本人で日本のトイレは全て無料だから慣れていないのよ、と説明している。すると受付係は公衆トイレがすべて無料だなんて、じゃあ、よほど汚いのね、と返した。この駅のトイレは他のところよりもかなり清潔であることをセールスポイントにして他より高めの20ルーブルの値段を設定したようである。

 バンクーバーでの冬季五輪が終わり、2014年度の開催地であるロシアのソチがにわかに脚光を浴びるようになった。「あのロシアで大丈夫かね」という懸念を吹き飛ばしたいのか、日本の新聞では「ロシアは威信をかけてカネに糸目をつけずに会場建設中」という記事が目立つ(新聞社によると大本営発表しか情報がないとのことである)。
 しかしソチの街に出てみると、オリンピック歓迎の立て看板やポスターは目につくものの、インフラ整備がどこまでできているのか、まるで見えない。建造中なら屋根の上にクレーンぐらいあってもよさそうなものなのに、選手村らしき建物も屋上に派手な標語が並んでいるだけで、なんだか途中で建設を中止したような雰囲気である。おそらく今ある資金で作れるところまで作って次の資金を待つ、という独特のやり方なのだろう。糸目をつけない、というのは糸目をつけるカネがないのだろう、と茶化したくなる。ソチもロシアだから公衆トイレ事情は同じはずだ。オリンピックともなれば全世界から観客がやってくるから、そこで清潔な公衆トイレをたくさん建てて、高い料金を設定して一稼ぎするつもりなのかも知れない。(川上なつ) 

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