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2010年4月 8日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第32回 アフガン・テロと明治維新(1)

 先月26日、首都カブールのホテル、サフィ・ランドマークで自爆攻撃が発生し、外国人を含む16人が死亡した。
 サフィ・ランドマークは地上10階建ての複合施設で、地下1階から地上2階までがショッピングモールになっている。ショッピングモールには中国から輸入された最新のカジュアル服や、小物、携帯電話、テレビゲームまで売られている。地下1階にはアフガニスタンで唯一エスプレッソを出す喫茶店があり、最上階には生バンドつき15ドルでバイキングのレストランがある。ホテルも併設されていて、「アフガニスタン随一のホテル」だそうだ。市民からは「シティ・センター」の略称で呼ばれている。

 僕もたびたびコーヒーを求めて、シティ・センターの喫茶店に顔を出していた(ここではカブールで唯一インスタントじゃないコーヒーが飲めた)。喫茶店の天井は最上階まで吹き抜けになっていて、金メッキで塗装されたエレベーターがせわしなく上下している。ここで撮った写真がサウジ・アラビアやカタールの高級モールのものだと言っても、納得できるほど豪華な作りだ。
 喫茶店でよく見るタイプが、ツイードのスーツを着た紳士、すらっとしたタイを結んだビジネスマン風の男、皺ひとつないアフガン服を着た男、という感じだ。どれもアフガニスタンではなかなか見かけることが出できない人種ばかりだ。その3分の1くらいは外国人だと思う。

 このシティ・センターの喫茶店の後継はアフガニスタン復興の象徴として、たびたび新聞やテレビで取り上げられた。
「アフガニスタンはこんなショッピング・モールができるほど復興しました」と言うには絶好の光景なのだ。
 けれど、実際のところここに入れるのはアフガニスタンでもごく一部の人間だけだ。建物の入り口にはAK47を持ったセキュリティと金属探知機が設置されていて、小汚い民族衣装を着た人間は小銃で小突かれた上に追い出されることになる。基準は分からないけれど、「ある一定上の所得を得ていないアフガン人は入るべからず」ということだと思う。外国人はIDを見せなくても入ることができる。

 建物の中では大きなモップを持った掃除婦が常に忙しく動き回っている。例外なくモップの先には大量の砂粒が集まっていた。カブールは埃っぽい街なのだ。けれど、そのおかげでこの建物はカブールでは唯一といっていいほど、埃っぽくない場所だった。僕はシティ・センターに入ると清潔な建物と、薄汚れた自分の衣服と肌にまとわりつく埃っぽい感触と比較して、妙にみじめな気持になったりもした。
 しかし、どうしてこのシティ・センターは自爆攻撃されたのだろう。政府要人はいなかったし、軍事拠点でもない。ただ豪華なだけの建物だ。内務省や軍事基地に特攻するならまだ分かる。政治的な敵だもの。だけど、今更民間人を巻き込んだテロを起こしたって、何の政治的な意味もない。何が実行犯を自爆までさせて、このビルを破壊させたのだろうか。
 シティ・センターの外壁は一面モスグリーンのガラス張りだ。犯人はこのピカピカ光る壁を見て何を思ったのだろうか。
 僕みたいに「センス悪いなあ」とは思わなかっただろうか?
 爆弾を体に巻いてビルの前まで来て、「ちぇ、やっぱり馬鹿らしい。やめよ。やめよ」とは思わなかったのだろうか。
 僕はどっちも間違いないと思う。このビルのセンスの悪さは東京都庁と比べたって負けやしないし、腹に爆弾を巻いて気分のいい連中なんているはずがない。(白川徹)

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