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2010年3月16日 (火)

狭山事件担当検事が電話で回答!!

 いま狭山事件が「佳境」にはいっている。
 狭山事件? こう言われてもピンとこない読者が多いのが、悲しいかな、現状ではなかろうか。なにしろ、いまから45年以上前の出来事である。1963年5月1日、埼玉県狭山市に住む当時16歳の高校生、中田善枝さんが学校からの帰宅途中に行方不明となり、同日午後7時40分ごろ、自宅に20万円の身代金を要求する脅迫状が届けられた。2日深夜、40人態勢で張り込んでいた警察は現れた犯人を取り逃がし、そして事件発生から3日後の5月4日、善枝さんが遺体となって発見されるという最悪の事態を迎える。この事件の直前には、戦後最大の誘拐といわれた「吉展ちゃん事件」でも警察は大失態を演じ、社会の警察に対する不信感が極限に達していた時でもあった。そういった背景からか、強引きわまりない捜査の末、結局、被差別部落出身の石川一雄さんが「犯人」として逮捕された。
 浦和地裁での第一審は「死刑」、東京高裁の第二審では「無期懲役判決」、そして最高裁の判断は上告棄却となり1度は「終結」となりかけたこの狭山事件は、おおくの人々の支援と、そしてなにより石川さん自身の闘いによって、現在、第3次再審請求のただなかにある。

 昨年の9月10日、裁判長、検察、弁護団の「三者協議」で、東京高裁・門野博裁判長は、証拠開示についての意見を10月末までに提出するよう検察に求めた。検察は、10月30日付けの意見書で「殺害現場」とされる雑木林の血痕検査報告書(ルミノール反応検査報告書)は「存在しない」、さらにその他の証拠も開示の必要性はない、と回答を出す。
 しかし事態は一転する。12月16日の三者協議で門野博裁判長は東京高検の検察官に対して、裁判で提出していない捜査書類など、前述したルミノール反応検査報告書含め8点もの証拠を開示するように勧告した(ルミノール反応検査報告書については、存在しないとするならば合理的説明をするよう求めた)。第1次再審請求以来、狭山事件での開示勧告は初めてのことである。さらに言うと、法的拘束力こそないものの、全事件を通しても、これまで開示勧告に検察が応じなかった例はないという。冒頭で「佳境」といった理由はここにある。
 と、ここまで大まかな推移を整理してみたが、この間、東京高検の狭山事件担当検事に、なんと電話で直接、証拠開示の要請をした勇気ある青年が神戸にいると聞き、著者はさっそくお話をうかがいに行った。

 青年の名は勝田浩聡(かつだ・ひろさと)さん。25歳。ラフな格好で屈託がなく、ひとなつっこい笑顔が印象的だ。バスの清掃などの仕事で頑張っていたが体調を崩され、現在は精神保健福祉士を目指して猛勉強中だという。
 勝田さんが電話をしたのは昨年9月25日。やりとりの詳細は『狭山闘争ニュース』(部落解放同盟全国連合会編集発行)第162号に掲載されている。記事を読んでみると、窓口から変わった担当検事が当初「だるそうな感じ」だったのが、次第に「何らかの回答はします」、さらに「必ず回答はします」「新しい証拠が見つかれば、再審ということもありますし」へと、ついに当事者から言わしめてゆく様子の変化がうかがえる。どうやら勝田さんの純朴な人柄が、受話器を通して担当検事の虚を突いたようだ。

―――どうしてまた担当検事に電話で直接要請しようと思われたのですか?
「ビラをまいたり運動を続けてきたんですけど、自分自身が検事と話して実際に確かめてみたかったんです」
―――担当検事が電話に出てくるという勝算はありましたか?
「ありました。言い方があると思ったんです。冷静に話すよう心掛けましたから」
―――窓口から担当検事にかわる間、どんな気分でしたか?
「僕がここで抗議したら、もう次回から検事が出てこなくなるじゃないですか。次につながるよう次につながるようにって、冷静になるよう心掛けてました」
―――緊張しませんでしたか?
「それほどしなかったですね。検事の肩を持つとかじゃなくて、純粋にこういう質問したらどうこたえるのだろうかとか興味がありましたから」

 次回の三者協議は今年5月。今回お話をうかがった勝田さんは部落解放同盟全国連合会に所属する青年だが、部落解放同盟中央本部(マスコミが部落解放同盟というときは、一般にこちらの団体)も含め、全ての被差別部落民、冤罪なき社会を願う心ある民衆の思いはひとつだ。「検察よ、証拠をちゃんと開示せよ!」(後記)雑木林のルミノール反応検査報告書について、本文の通り三者協議で検察は「ない」と回答した。しかし、1985年の衆議院法務委員会において社会党議員の質問に対し筧栄一法務省刑事局長(後に検事総長)は「ある」と回答している。いったいどちらなのか!(柳田勝英・ルポライター)

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コメント

4月8日の時点で、検察は証拠開示を行っていません。

投稿: 原田やより | 2010年4月 8日 (木) 23時45分

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