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2010年3月13日 (土)

ロシアの横暴/第35回 五輪誘致で役所の手数料が高騰!?(2)

 その次に考え出した吸い上げ方法が公共料金と役所の手数料の大幅値上げだ。これらは、ウォッカのようにとりっぱぐれる心配はない。運転免許証更新料はともかく、公共料金はガマンして通り過ぎることはできないからである。
 役所の手数料値上げのうち、特に幅の大きいのが運転免許証更新料とパスポート発給料の2つである。
 まず、ごく最近外国行きパスポートの手数料が4倍になった。(600ルーブル《=約20ドル》から2400ルーブルに、3月1日からはさらに有効期間が10年(現在は5年)の新式になるという。再値上げは目に見えている。
 自動車免許更新料は10倍になった。自動車を持っている階級はそれなりに「持っている」からこれぐらい値上げしてもかまわん、と当局は思ってのことらしい。事実、ロシアで自家用車を買えるのはまだまだ一部である。しかし外国行きパスポートはやや事情がちがう。数年前までCIS諸国内はパスポートなしで行き来できたが、ロシアとの関係がぎくしゃくし始めた国に行くのは「外国行き扱い」としてパスポートが必要になった。だから今回のパスポート値上げは旧ソ連で生きてきた人々には大打撃である。

 日本にあてはめて考えればわかりやすい。地方から東京に出て働いていればそこで生活基盤を築く。親戚もできるかもしれない。20年ぐらいが過ぎてUターンしようとしたら、生まれ故郷は独立して外国になっていた・・・おまけに東京とはウマがあわない首長がいるので通行証が必要、明日から4倍に値上げ、と言われたようなものである。
 パスポート手数料値上げで「外国行き(CIS諸国行き)」をあきらめる人が増えたら手数料収入が減るかも知れないことを見越して4倍にしたのだろうか。しかしいくら4倍値上げで断念する人が出るといっても、第二のふるさとのようにつながりの深いCIS諸国ならば、全体的な手数料収入は大幅増が見込める。

 (ロシアのパスポートについて説明を加えておくと、まず14才以上の全国民が国内パスポートというものを所持しなければならない。ソ連時代から、というより、帝政ロシア時代からそうである。日本人の感覚では「パスポート」は外国に行くための「旅券」だが、ロシアでは「居住地身分証明書」、今でいうIDカードみたいなものである。ちなみにソ連時代はこういうものの手数料は安かった。外国行きのパスポートも冗談かと思うほどだったが、一般人に発給されることはまれだった。ペレストロイカが始まるとすべての人が外国行きのパスポートを申請できることになったが、申請に関わる「上納金」が1ヶ月分の給与レベルとなって、事実上一般人は外国に行けないままだった、という笑えない笑い話があった)

 余談ではない余談だが、旅券を規定の料金で申請するといつのことかわからないので、現在もヤミ手数料が横行しているが、政府の値上げ宣言とともにこちらも値上げでされた。
 公共料金の方も4倍・10倍ではないとしても、大幅に値上げされた。その中の課税率がいくらかは不明だが、外国行きパスポートや運転免許とちがって全国民が支払うものだから確実な増収となる。

 ロシアの横暴にうんざりしていた旧ソ連構成国は次々に離れていったが、産油国の強みを活かしてエネルギーをロシアに依存するヨーロッパ諸国をひとまず従わせたので、反旗を翻したはずのウクライナもあっという間にロシアにひざまずくことになった。オリンピック開催地ソチは対立するグルジアのほか、ウクライナとも近いことから何かと不安要因が取りざたされていたがこれで安心である。「わがロシアに経済危機や不安はない」とでも言いたげに最近の新聞にはこうしたロシアの「強気面」関連の記事が多い。

 風の便りによれば極東地域から北極海を経てヨーロッパに至る海運路が開かれる見込みだそうで、パナマ運河もスエズ運河も通らずに7つの海を制覇する勢いだとぶち上げている。単なる威嚇攻撃みたいなものかも知れないが、国威掲揚のためのオリンピックの必要経費は国民から吸い上げておいて、みずからの懐を潤すのには、この海運路を開こうとしているのではないかと勘ぐりたくなる。(川上なつ) 

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