ロシアの横暴/第34回 五輪誘致で役所の手数料が高騰!?(1)
バンクーバーでの冬季五輪が終わって次はロシア・ソチである。選手団は「ソチでまた会いましょう」と笑顔で別れていったとかで、急に「ソチ」が目立ってきた。
さて、その4年後にオリンピックを迎えるロシアだが、バンクーバーでの成績が振るわなかったというので、辞任せざるを得なくなった閣僚がいるらしい。やめ際に「私がやめたからといってソチで勝てるとは限らない」と、当たり前といえば当たり前の、しかし嫌みたっぷりのせりふを残したそうだ。
そもそもソチでのオリンピックが決まった時からしてロシアは傾いていた。表面的には安定しているように見えた(見せた)から開催が決まったわけだが、実体はいつ崩落するかわからない砂上の楼閣である。そういうときこそ強気の構えをしなければならないから、あらゆる手段を講じて競り勝ったわけである。
その一方で経済面は「どこからオリンピックのカネが出てくるんだ?」と頭をかしげたくなる状態である。ある新聞の表現によれば「先進国が財布と相談しながらチマチマとやらざるを得ないのに、ロシアはカネに糸目をつけずにやっている」らしい。
先進国が財布と相談しなければならないのは国民の目がきびしいからで、ロシアの場合はオリンピック招致といえばそれだけで「我が偉大なロシア」と舞い上がる国民のおかげで相談はいらない。
しかし、ソチ・オリンピックの栄光をつかんだとたん、思いもしなかった米国初金融危機に見舞われた。原油安のダブルパンチである。当然、税収も落ち込んだ。
思えばソ連にはオリンピックの苦い思い出がある。1980年、やっとのことで手にした栄光のオリンピックなのに、米国主導で西側諸国の集団ボイコットに遭った。その次の大会がおあつらえむきに米国だというので東側まとめてボイコットをして憂さ晴らしをした。でも得る物は何もなかった。だから2014年の冬季オリンピックは経済危機などどこ吹く風を装って華々しくやりたいのだ。
そのためにはまずふらふらの経済建て直しをしなければならない。昔からよくあるブロック政策の導入から始めた。中古車市場に目を付け、そこに高い関税をかけることで国産車を守ろうとした。外国の中古車が来なくなれば国産車が売れると見込んだようだ。国内企業が勢いを取り戻せば、法人税も入ってくる。経済と財政の両方が回復するはずだった。
だが、この目論見ははずれた。中古車に高い関税を課したら中古車そのものが入ってこなくなったのだ。もちろん、関税も入ってこない。多数の輸入業者が廃業してしまったので、こちらの税収もなくなった。そのため今までより税収は落ちることになったわけだ。(これもロシア人の後知恵というべきか)
そこで考え出した次なる妙案がウォッカの値上げである。経済復興を待つことなく、直接国民からカネを吸い上げる方法だ。アル中対策の名目で実は酒好きの国民からがっぽり吸い上げる腹づもりだろう。しかし、それとてソチのオリンピック建設の費用には足りないかもしれない。それに万が一、国民がほんとうにまじめにアル中対策に乗り出したら、的確なアル中対策であった、と自画自賛するだけで吸い上げ分はない。(川上なつ)
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