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2010年3月 9日 (火)

アフガン終わりなき戦場/第31回 触らぬ神のたたりなし(2)

 昨年3月、アフガニスタンではある法案撤回に対するデモが国際社会の注目を呼んだ。可決された法律は夫婦間での男性による妻のレイプを合法化するものだった。欧米諸国は一斉に反発。オバマ大統領は「忌まわしい」とまで発言した。アフガン政府も圧力に負け法案撤回を決めたが、これに対して市民が大挙してアフガニスタン各地でデモを敢行したのだ。
 我々の基準からすると、「アフガン人はなんて女性差別的なんだ」と思うかもしれないが、これはイスラム教徒にとっては、自明の権利なのである。コーランのラマダンの項目にはこうある。

「断食の夜、汝らが妻と交わることを許してやろうぞ。彼女らは汝らの着物、汝らは彼女らの着物。アッラーは汝らが無理しているのをご承知になって、思い返して、許したもうたのじゃ。だから、さあ今度は。(遠慮なく)交わるがよい、そしてアッラーがお定め下さったままに、欲情を充たすがよい。(『コーラン』上巻、牡牛の章、183節)」

 つまり、ラマダン月に日が暮れた後、妻と交わるのはイスラム教徒にとっては神から与えられた権利なのだ。結婚後強姦自由法案(何て呼べばいいのだろう?)が欧米の圧力によって握りつぶされたことは、イスラム教徒の感情を刺激した。自分たちの正当な権利を欧米によって侵害されたと感じたのだ。 

 ただし、この法案の一件のみを持ってイスラム教徒が野蛮だと決めつけることはできない。大御所と言われる何百年も前に発生した全ての宗教は、現代の人権観念と照らしあわせれば、差別的としか見えない面も多い。たとえば、「先進国」アメリカの人権も相当キリスト教によって侵害されている。同性愛は認められていないところがまだまだあるし、女性の堕胎を受け持った医師が襲撃されることもある。
 しかし、欧米諸国は大なり小なり啓蒙思想の影響を受けている。啓蒙思想が広まって以降、欧米では絶対的に宗教を信じることが出来なくなった。日本は敗戦で天皇が人間宣言をしたことにより神を失った。
何が正しいか正しくないかということは、公的には民主主義制度の下で法を作ることで定め、個人的には一人一人がそれを考えなければならなくなった。死後の世界の在り方も、個人の考え方によるものになり、それを確実に証明することはできなくなった。つまり、一人一人が啓蒙思想の言う「理性」をもち、それぞれが考えなければならなくなったのだ。考えても答えの出るはずがない問いを死ぬまで抱え込むことになった。
 イスラム教国はトルコなど政教分離を実施している国以外は、啓蒙思想という道を通ってこなかった。だから、彼らは今でも無心に神を信じることができるのだ。
 私のアフガンの友人の多くも、死後は天国で何度セックスしても処女膜の再生する72人の乙女が迎えてくれると本気で信じている。死後の世界も、人生の悩みも、大体のことは神さまが順序立てて説明して、揺るぎない正解を示してくださるのだ。
 これを宗教の効能と見るか、弊害と見るかはあなたしだいだ。

 しかし、アメリカも大変な人たちと戦争を始めたものだ。僕はイスラム教徒が危険だと言いたいわけじゃない。宗教の中で生きるというのは、こういう物であり、イスラム教徒とはこういう人たちなのだ。神が作った絶対的な法ではなく、人間が作り出した不完全な人権や民主主義を旨に生きる私たちとはさまざまな点で異なる判断基準を持っているということを言いたいのだ。
 少なくとも、タリバンやアフガン人は国連決議無しで独立国に攻め込んだりしないし、ありもしない大量破壊兵器を理由に戦争をおっぱじめたりしない。放っておいてあげればアメリカみたいに威圧的でも危険でもない。追いつめるから暴発するのだ。
もう、放っておいてやるのが一番だと思う。彼らも40か国もの軍隊に自分の国をうろうろされるよりは、援助も何もいらないから、放っておいてほしいと思っている。
 彼らは彼らの基準で生活するし、アメリカ軍に変な言いがかりをつけられたりするのにもウンザリしている。
 まあ、僕の言いたいことは結局、「さわらぬ神に祟り無し」だ。
 オバマさん。もういい加減ケツまくって帰ってくれませんかね?(白川徹)

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