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2010年2月 1日 (月)

ロシアの横暴/第33回 寅年記念! 大トラで儲けるロシア政府(2)

 「お泊まり」程度では何の改善にもならないアルコール対策に誰もがうんざりしているときゴルバチョフの禁酒令が施行された。
 ゴルバチョフ自身は酒を飲まないから当然15日お泊まりの経験がない。アル中が酒を飲むのはそこに酒があるからだ、と酒販売に大幅な制限を加え(販売時間を短縮し、販売店舗を縮小)、値上げもした。酒を買えなければ買わないだろう、そしたらアル中は減る、と踏んでいたようだ。だが、ロシアのアル中はそんなことで何とかなるレベルではなかった。

 開店の何時間も前から酒屋の周りにはアル中が押し掛けて気炎をあげた。こまめな者は密造酒造りを始めた。原料である砂糖が品薄になるとオーデコロンまで動員して密造酒造りはエスカレートした。実数は明らかでないが、メチルアルコール系の密造ウォッカで命を落としたり、廃疾となった者が相当数いるはずである。
 国民の恨みを背負って失脚したゴルバチョフの後任となったエリツィンは大酒飲みとして世界に名をとどろかせていた。 もちろん禁酒令は解かれ、というより、解除令など面倒なことはせず放っておいたのだろうが、大統領を先頭にロシア全体が酒浸りになった。禁酒令施行時に飲むなと言われて飲みたくなった新規アル中もそのまま飲み続けたのでアル中患者の数は高水準を維持した。

 エリツィンの後を継いだ2人の大統領のうちのメドベージェフ現大統領は2010年1月から酒の値上げに踏み切った。大幅値上げによる実質禁酒令である。値上げに先立って「この国を再生するにはアル中と闘うしかない」と宣戦布告をしていた。仮に氏がゴルバチョフ同様、酒をたしなまない人物としてもロシアに禁酒令は無理なことぐらいわかっているはずである。ゴルバチョフの禁酒令の大失敗からまだ20年しか経っていないのだから。
 日本人には理解できないが、ロシア的思考回路ではこうだ。
「同じ轍は踏んでいない」
「アル中退治ではなく、財源確保さ」
「アル中と闘うっていったって、アル中がいなければロシア経済は成り立たない」
「社会を混乱させておくにもアル中は不可欠だよ。アル中が団結して反体制になることはないからね」
「どんなことしたってウォッカ代をひねり出すのがアル中だから、打ち出の小槌」
「麻薬密売と同じ発想で値上げをした」

 1月中旬になって、ロシア内務省大リストラ計画が発表された。なんでも90万人もいる警察官のうち18万人ぐらいをクビにするという。クビにする一方で警察官の給与を上げるから、維持費用は変わらない。ということは本当の目的はリストラではなく、「内務省警察官不適当者退治」である。さらに言えば不良警官退治策ではなく、政府の支持率回復を兼ねた国民分断策である。不良警官たちの横暴に怯える国民からは「よくぞあいつらをクビにしてくれた」と感謝され、クビにならなかった警官たちは選ばれた者としての優越感に浸り忠実なイヌとなってくれる。国民を分断することは政権維持に必要な措置である。そのためには国民に優劣をつけて差別化するのが手っ取り早い。
 追い剥ぎまがいのオイコラ警察にうんざりしている国民は、当然「不良警察官退治」を歓迎している。不良でない警官は給与がアップするというので、有頂天になっている。だが酔い覚ましお泊まり客から所持品を奪うような不良警官18万人が失業者となって街に出てきたらどうなるのだろう。目先のことしか見えなくなっている国民はそこまで見通せないでいる。
 最新のインターネットニュースによるとロシアでは砂糖がこの20年間で最高値になっているそうだ。ウォッカ値上げに伴い、密造酒づくりが復活したもようである。(川上なつ) 
 
 

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