ドーマン法に生きていた私~脳性まひ者の告白~/第21回 ヘレンケラーを見習いなさい
まだ薄暗い早朝から、日が暮れる頃まで延々ただただ訓練を消化していくだけの毎日。 遊びたい盛りの子どもにとってドーマン法はあまりにも残酷すぎます。その上さらに、トレーナー役である親からは『もっと真面目にしなさい』だの『質が悪い!』だの『もっとタイムを縮めろ』などと言われて、おしんのように健気に『はい』と黙々と頑張り続けられるわけがありません!こんな時、たいていは『ちゃんとやっているのに、うるさい!』などと水掛け論になり、果てには収拾がつかない程の親子けんかに発展することもしばしばでした。
そして極めつけは『あんたはそんなんだからダメだっていうのよ! ヘレンケラー見習いなさいっ。三重苦を見事に乗り越えて…(ウンヌンカンヌン)…』とグチグチと言われた日にゃ~、秘かに尊敬して何度も何度も伝記を読んでいても『ヘレンケラーがなんじゃい!!』と罵倒したこともありました(笑)
これほど過酷な訓練法であるにもかかわらず、賛否両論がある中でもドーマン法を支持する家族が絶えないのは「脳障害も治る」という画期的な言葉の裏に潜む未来への光が見出せるからではないでしょうか? うちの両親のように、本当に信じ切って始める家族は少ないと思います(笑)。多くの家族は「たとえ完全には治らなくても…少しでも良くなるのだったら…」という気持から取り組まれるのではないでしょうか。つまり障害児を抱える親御さんに共通すること、それは「我が子のいく末…このままでこの子の未来はあるのか?」という不安で押しつぶされそうになってしまう。なんとかしなければ…ともがけど、助けを借りたいお医者さんや専門家の口から出る言葉は『障害は治らない』という絶望的な言葉だけ。きちんと障害を受け入れられていたならば、この言葉から次のステップへと踏み出せるのですが、受け入れられてないとたちまち、この言葉で奈落の底へと突き落とされてしまうのです。つまり「障害があっては生きていけない」という思い込みの元で『治らない』と言われると、お先真っ暗になっちゃうんですね。
日本人の特性なのか、日本では『とりあえず頑張りましょう!』と明確な表現を避けたがる傾向にあるようで、これは不安な親の気持をさらに不安に。受け入れられないでいる親をさらに受け入れにくくさせているように感じます。
うちの親なんかも、まさに、そんな障害児の親代表!のような両親でしたもの。
ドーマン法にのめり込むパターンとしては…
①とにかく我が子の障害を受け入れられない
②だけど周りからは“どこかおかしいわよ”と言われる
③意を決して病院へ行くが…(診断名がつく)
④治る方法はないと医師や専門家から宣告
⑤ますますどうしていいのか途方に暮れる
⑥この子の将来が不安
⑦やっぱり受け入れられない
⑧治る!と先に希望を見出してくれるドーマン法にすがりつく
⑨でも、完全には治らないのだと思い始める
⑩けれど、やっぱり受け入れられない
⑪だから、一度はじめたら、なかなか足を洗えない(辞められない)
とこのようになるのだと思われます。ちなみにうちの親をモデルに箇条書きで表したものですので、最も多いパターンは、おそらく④と⑤の間に、必死になって治療法を探し宇宙の果てまでも!!という意気込みで日本中を翻弄されてからドーマン法に辿りつかれるのだと思いますけれど。
ヘレンケラーにしても、それから見ず知らずのたまたま公園で出くわせたおっちゃん(何かの職人さんだと思われる中年男性。ビッコをひき片足のみが不自由そうでした)名前も知らなければ何も知らない全く赤の他人であるおっちゃんのことを、さも全てを知っているかのように母は『ほら楽歩ちゃん。あの人、歩行の形は悪いけれど、あれだけのスピードで歩けるからこそ仕事ができるのよ! わかる? あなたにはそこのところの努力が足りないのよ!しっかりしなさいっ。あの人だって昔、血のにじむような努力をなさったから今があるのよ!』と。全くたまったもんじゃありませんョ! こちらは只今、ドーマン研究所からの指示で「質の良い歩行をするように」命じられていた時期だったのですから(笑)本当に無茶苦茶ですわ~!!
目玉焼きとプレーンオムレツを比較し「どうして同じタマゴなのに、プレーンオムレツのように白身と黄身を上手く調和できないのよっ!それはあなたの努力が足りないからなのよ!」と言われてるようなものです。
偉人であれ、通りすがりのおっちゃんであれ、母の目から見て“人生の安泰”をつかんだ障害者を目の前にした時、おそらく無意識にワケノワカラナイ叱責を始めざるを得なかったというのは、それだけ先の不安というものが想像を絶するぐらい大きなものだったということなのでしょうね!
うーん、それにしても、この手の叱責は辛かったっす(笑!) (大畑 楽歩)
楽歩さんのブログはこちら→ http://ameblo.jp/rabu-snoopy/
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