ドーマン法に生きていた私~脳性まひ者の告白~/第20回 “障害児”の内訳
ドーマン法をきっかけに、ようやく我が子を“障害児”として受け入れられた両親でしたが、それまで頑なに「この子は健常児です!」と虚勢を張ってやり過ごしてきたヤワな両親のこと…。“障害児”と一口に括られるこの単語の中には、おびただしい数の障害が含まれることをよく理解できていなかったのだと思われます。ドーマン研究所では、ダウン症の子も多動障害の子も、もちろん脳性麻痺もすべて“脳障害児”と診断され、さらに、主に運動機能に問題を抱える子は“中脳障害”と呼ばれ、知性に問題がある子は“大脳障害”と呼ばれていました。つまり、研究所内では、ダウン症も脳性麻痺も同じ運動機能障害として(中脳障害)扱われるのです。そもそも「脳性麻痺」の中にも<痙直型・アテトーゼ型・混合型>と大きく分けて3タイプ、専門的には5種類にも分類され、それぞれの型によって、障害のあらわれ方に特徴があります。もちろん同じ型であったとしても、障害の度合いによって「できること・できないこと」の差は大きく異なります。たとえば私の場合はアテトーゼ型なので、自分の意志と反して絶え間なく体が揺れ動く、不随意運動や言語障害が伴います。それでもまがりなりにも一人で歩けますし、聞き取りにくいとは言えなんとかコミュニケーションは図れています(?)。また同じ障害レベルの脳性麻痺者の方でも型が違えば…印象もずいぶんかわってくることでしょう。(言語障害や不随意運動を伴わないだけでも、えらい違いです)なので知識がなければきっと「この二人は本当に同じ名称の障害者なの?」と首をかしげてしまうと思います。
このように障害の種類だけでも沢山あるのです。しかしドーマン理論では、障害の種類や現れ方が違えど“脳”の損傷が原因であり、また多くの障害名は混乱を生むだけなので“脳障害”と一括りにし、さらに治療の仕方も同じというのがドーマン博士の基本理念なのです。私は一障害者であって、医師や専門家ではありませんので詳しいことはわかりませんが、あまりにもこの理論は大雑把すぎるのではないでしょうか?
しかも脳という部位は最も緻密で繊細な器官なんですから、理学療法士としても、もう少し繊細さが求められてもしかるべきなのではないでしょうか。
無知な両親に育てられた私は、しなくてもいい苦労をいっぱいさせられましたョ~(笑)
ドーマン法をやる前から、つまりまだ私のことを健常児だと思い込んでいたい時期に、テレビのドキュメント番組などでサリドマイドの障害の方や、交通事故などで片腕、片足になり義足を使いこなし陸上などに打ち込んでおられる姿がブラウン管に映る度、両親は『ほら見てごらんなさい。努力がなんだって可能にするのよ!! この人たちはね、血のにじむような努力をして今のこの姿があるんだよ。』とか『あの人は車椅子に乗らなければいけないぐらい重い障害なのに、普通にしゃべったはるじゃないの!それに比べて楽歩は努力が足りん!!』と言われる始末。まだ自分自身でも自分が障害児なのか、はたまたそれはどんな種類の障害で、テレビの人たちと何がどう違うのか?皆目わかっていない状態の中でも「私だって努力してるっちゅーねん! それに車椅子というアイテムを意地でも使いたくないパパとママであって…それでも私は文句も言わず、心もとない歩行で頑張ってるのに…。なんでこんな屈辱受けなあかんねん!!!!」と毎回いいようのない理不尽さを感じずにはいられませんでした。これがドーマン法によって娘が“脳障害児”だとわかってからは、もっと顕著に現れはじめました。同じ集中治療を受けていて、たまたま年齢も近く女の子で、歩き方に問題をかかえているという共通点だけで“同じ障害”だと信じて疑わず(その障害の種類も程度なんて全くおかまいなし!)元から言語障害がないその子と比べては『努力が足りないからよ!』と叱責を受けなければならなかったのですから!! たまったもんじゃありません(笑)
まぁもっと頑張って今より少しでも良くなってほしいという親心がわからなくもありませんが、障害児から救い出す前に、一人の子どもとして最も大切な“こころ”を育む育児を優先して欲しかったですけどねぇ…。だから私は捻くれ者になっちゃったのでしょうけれど!!
身体障害者手帳に書かれた障害名のうろ覚えでなく、せめてムスメの障害のことぐらい知識として仕入れてから“ドーマン法”に臨んでほしかったですね!! (大畑 楽歩)
楽歩さんのブログはこちら→ http://ameblo.jp/rabu-snoopy/
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