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2009年12月27日 (日)

ロシアの横暴/第31回 列車爆破とナイトクラブ火災の真相(2)

 さて、この事件についてであるが、当初はロシア国内の経済的な不満分子の仕業かも知れないというのがおおかたの見方になっていた。というのもこの列車の料金がとても庶民には手の届かないものだからである。自分たちには縁のない世界の人間たちにムカつく、「金持ちはそれだけで悪」というロシア革命のころの思考回路だ。現在のロシアの「金持ち」というのはほぼ例外なく「共産主義は悪だ」と唱える元共産党幹部グループだから、いつの時代にも負け組にならざるを得ない庶民の腹の虫はおさまらない。特権階級の温存に辟易すれば「金持ちはぶっ殺してしまえ」という乱暴なグループがでてくるのもうなずける。真偽のほどはともかくも、経済格差に怒る者の仕業という見方がでてくるのがロシアである。ただし、金持ちにムカつく庶民貧民が大量の爆薬を入手できるはずもなく、実際には事件を知って「ああ、スッとした」と言うのが関の山だろう。 

 もたもたしているうちに犯行声明が出たので、プーチン首相はここぞとばかりに「テロには先制攻撃を」とぶちあげて一件落着となった。しかも先制攻撃先を「チェチェン」に特定せず玉虫色にしているところがミソである。これはチェチェン戦争を鎮圧した、という公式発表の帳尻を合わせつつも、国中に不満分子があふれていることを吐露しているようなものだ。ただしプーチンがどう言おうと世論の大勢はやはり「チェチェン・カフカスの仕業」である。

 数日後、ウラル地方のある都市でその名も「びっこのおうま」というナイトクラブで火災が発生し、100人以上の客と従業員が死んだ。自由化の波に乗って雨後の竹の子のように出現した遊興施設であるから、当然利益第一主義となり、安全は二の次三の次となる。その後の報道によると、このナイトクラブは消防署からの再三の防火設備不備警告を無視していたという。日本人の感覚からすれば経営者のあくどさが「事故の主原因」となるだろうが、ロシアでは警告する側である。警告は賄賂要求付き、つまり「いくら積めば見逃してやる」という警告だからだ。ロシアでは賄賂なしに警察や消防の警告を無視することは不可能である。もちろん逮捕されるのは「警告を無視した」ナイトクラブ側となる。

 ところで、ネフスキー特急事件で決まったばかりの「服喪の日」がこの事故に適用されたかどうか? おそらく、「警告を無視した過失によるもの」だから適用されないと思われる。
 思えばロシアが自由だ、改革だと叫んできたこの20年の間に、一体何日の服喪の日が設定されたのだろう。この調子でいくとそのうちに年の半分は服喪の日になりそうだ、という笑い話もあるそうだが、実はあんまり笑えない。この列車事故の死者は30人程度で、これを基準にするとロシア中毎日服喪の日となってしまう。というので今後は100人以上の死者が出た場合を「服喪の日」とするらしい。これは半ば茶化したの報道なので、実際に決まったかどうかは定かでない。
 何か惨事が起きれば「何でもすぐにチェチェン」のロシアだが、さすがにこのナイトクラブ火災にはチェチェンの影はでてこなかったそうだ。(川上なつ) 

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