ドーマン法に生きていた私~脳性まひ者の告白~/第13回 マスキング
今日からしばらくは、生理面のプログラムについてご紹介していきたいと思います! どちらかというとあまり日の目を見ない生理面ですが、これまた過酷なメニューがてんこもりなんですョ!!
運動プログラムは主に本人が頑張ってこなさなければならないメニューばかりで、知性プログラムは、その教材作りや創作に必要な道具やヒントなどを与えるのは基本的に親の役割です。むろん楽器の習得や読書、日記、その他の創作活動などは、本人が取り組まなくてはならないというものの、受身でいられるので気が楽なプログラムでした。また親も運動プログラムに一番力を注いでいましたから、私もテキトーにこなすことが可能なプログラムだった訳ですね~。(←あくまでも内部事情です!)
生理プログラムが担う役割は、
① 健康
② 身体的成長(体重・身長・胸囲の増加)
③ 薬物摂取の排除(てんかんなどのお薬)
などが主な目的であり、それらを達成するために、栄養管理(徹底した栄養管理と脳をベストコンディションに保つための水分コントロール)、呼吸の向上などを目指したオリジナルメニューが処方されていくのです。
おそらく生理面のプログラムで代表的なメニューといえば“マスク”(現在はマスキングと呼ばれているらしいのですが…)が挙げられるのではないでしょうか。
私が治療を受けていた頃のマスクの種類は全部で3タイプあり、一番最初に与えられるマスクが“反射マスク”と呼ばれる三角形の形をしたビニール袋みたいなオリジナル製品。当時は研究所から見本として数枚しか支給されず、見よう見まねで親が苦心して手作りしていました。まず厚手のビニールを三角形にカットし、2枚をコテでプレス。これで三角形の袋が出来上がります。そして三角形の頂点の部分に短く切ったストローを刺し、鼻にあたる部分にはピッタリとフィットするように針金を差し入れ、顎から頭にひっかける部分にゴムが通せば反射マスクの出来上がり!!
この特殊マスクで鼻と口を覆うのです。非常にあやふやですが、反射マスクは確か1分間装着時間だったと記憶しています。ストローが付いているというものの、ほんの20~30秒でゼェゼェ息苦しくなってきます。つまり二酸化炭素の過剰摂取が血中の炭酸ガス濃度を増加させ、脳血管への血流を増やす、という理論。一分経過し、マスクを外すと、深呼吸をするのが苦手な重度脳障害児でも自ずと深い呼吸が行えるというもの。
あくまでも私個人の見解なのですが、ドーマン法のプログラムの中で唯一、害がなくメリットだけを勝ち得たメニューが、この“マスキング”といえるでしょう!
これを私の場合は一日90回ほどこなしていました。一回の間隔を最低5分間は空けなければならないので、考えてみたらこのプログラムをこなすだけで1日仕事ですよね~
このマスクのお陰で確かに呼吸機能は大幅に改善され、大きな声で話せるようにもなりましたし、ヨダレでいつもグショグショだった胸元ともおさらばできました。そして何といってもてんかん発作の回数が軽減したことが両親にとって何より嬉しいことだったみたいです。私は発作の回数が軽減したことよりも、起こってしまった時や、起こりそうな気配を感じた時にマスキングをするとピタッ! と止まってくれるので、なにか魔法のマスクを手に入れたような感覚でした。完全に発作が起こらなくなった後も、ドーマン法を辞めてからでも、このマスクだけは、いつも肌身離さず持ち歩いていました。お守りとしての役目も存分にありましたが、研究所のレクチャでは度々「ドーマン法で発作を撲滅することは簡単でも、訓練を途中で辞めてしまった者は元の木阿弥になる」というようなことを再三、聞かされていたので「またまたぁ~お得意のマインドコントロール術ですなぁ」と聞き流しつつも、このワタクシでさえ、博士の張り巡らされた罠を完全に回避することはできなかったみたいですね~!
柔和なフェイスのドーマン博士 恐るべし!!!です。(大畑 楽歩)
楽歩さんのブログはこちら→http://ameblo.jp/rabu-snoopy/
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