ドーマン法に生きていた私~脳性まひ者の告白~/第9回 シモナカルドローニ歩行
かなり飛んでる(?!)この連載記事に、そろそろみなさん慣れてきて頂けた頃でしょうか?さて、今回ご紹介する歩行プログラム・シモナカルドローニ歩行の内容もかなり奇抜なので、みなさまココロシテ読み進めて下さいネ!(笑)
このプログラムは、曲がりなりにも独立して歩ける患者に対して処方される、歩き方の質を高めるプログラムなのです。イタリアのシモナ・カルドローニという少女が、このプログラムでパーフェクトな歩行ができるようになったことから、この名前がついたということでした。
このプログラムの目的は「美しい歩き方」を徹底的に練習するためのもの。
これに付随してくるゴールは≪質の良い歩行を完全にマスターすること。(歩幅は5センチ!)≫ なのです。 ヒェーーー そんなバナナ!です。
そもそも、このゴールがクリアできたならば脳性麻痺とおさらばできるではありませんかぁぁぁ。 私は[あり得ない…]と秘かに確信しつつ、親の目はギンギンキラキラ☆☆☆…。
無駄だと魂が叫んでいても、アホくさぁ~と頭の中でコダマしてようと、これだけの多大なる犠牲を家族に払わしてきた私には“取り組む”という選択肢以外に道は残されていないと思いました。【やらねばならないのねー】まな板の上の鯉とでもいいましょうか?否応なくジェットコースーターに乗せられちゃった気分です。【行くとこまで行ってみましょ!】
覚悟を決めて取り組んだものの、このプログラムには肉体的にではなく、精神的にかなり参りました。なぜならば…この歩行プログラム以外では次の再診の日まで一歩も歩いてはいけない!と言い渡されるのです。移動は高這いか、抱っこで移動することを厳守することが最低条件になるのです。なまじ歩ける者が、立つな歩くな!と命じられても…日常生活を営んでいくにおいて、どう考えてたって無茶苦茶過ぎます!!
でも!親の目はギンギンキラキラ☆☆☆…。うっかり立ち上がろうもんなら、ものすごい剣幕で駆け寄ってこられ、ぶん殴られそうな勢いだったのですから、精神的に追い詰められても不思議ではありませんね。(親子共にね)
このプログラムは、一歩踏み出したら身体をまっすぐにして、出した足に体重をかけ、また次の一歩を踏み出す…という繰り返し。このプログラムには速度は全く関係ありませんでしたが、その代わり“完璧”が求められるのです。スタッフからは「正しく歩くことが大切ですから、ちょっとでもバランスがくずれたら、次の一歩はストップして、時間をあけてから続けること。悪い一歩は良い百歩と相殺します。だから訓練以外では断じて歩行は禁止!なのです。これは必ず厳守して下さい。」とさらりと言い渡されます。
このプログラムに取り組んでる頃、世は三井物産マニラ支店長誘拐事件一色で、連日マスコミ各社を賑わしていました。自由時間もあまりない訓練生活の中で、唯一、テレビだけが私と社会とをつなぐものでした。連日、この事件一色の報道番組の中で、当時マニラ支店長の若王子さんの右手中指が欠損しているように見える写真や、弱り切った声のテープが延々と流されていました。世間では超エリートコースを歩んできた若王子さんに対してやるせない気持ちと同時に一日も早い解放を求める世論が沸騰していました。
若干8歳だった私が理解するには難し過ぎる事件でしたが、歩くこと一切を禁止され犬や猫みたいな生活を強いられる中で「若王子さん、無事に解放されたらいいのになぁ」と願う一方で、「なんで私を誘拐してくれなかったんだろう。なんだか虐待されてて辛そうだけど、それでも若王子さんが羨ましいなぁ…」というイカレタ感情を持っていました。
今から考えると恐ろしい感情の持ち主の子どもであり、よくもまぁ、その後まともに育ったもんだわ~と自分でしみじみと思う今日この頃…。
こんなに追い詰められていたとは、きっと両親さえも知らないと思います(笑)
そんなイタイ子だったからこそ、親の立場になった今“親業”がいかに難しく、自分の感情を抜きにして子どもを見られる“洞察力”が親として最大の役目だと感じずにはいられないのです。だから子育ては楽しく、また難しいのでしょうね!(大畑楽歩)
楽歩さんのブログはこちら→http://ameblo.jp/rabu-snoopy/
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