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2009年11月29日 (日)

ロシアの横暴/第29回 メディアが取り上げないゴルバチョフの実像(下)

 このインタビュー記事は最後にとてもわかりにくい氏の発言でしめくくってある。「ロシアと欧州の対立を許してはならない。その対立はすべて悪い方向に向かわせる」とある。うがった見方をすれば現在西欧がロシアに対して抱いている何か――人権問題が一番おおきい――を呑み込んで、ことを荒立てるな、というわけだ。たとえば2年近く前、コソボ自治州の独立をEUが認めたことで、ロシアが殺気立ったことがある。このように今のロシアはゴルバチョフのソ連とちがうから、刺激しないほうがいいよ、ともとれる。
 とどのつまり、欧州を安全にしておきたかったらロシアのうろこを逆さになでるようなことはせず、持ち上げておけ、ということだ。
 このインタビュー記事をどう解釈しようとそれは読者の勝手である。だが、アメリカのイラクやアフガン介入などにうんざりしている平和主義者が(平和主義でなくとも)「不介入」の3文字を見ただけで躍り上がってはならないことも暗示している。
 ゴルバチョフは昨年8月のグルジア戦争のとき、グルジアなど徹底的にやっつけろ、と言った張本人だからだ。(川上なつ) 

 ソ連の政権交代は常に前政権の批判で始まる。スターリンが死んでフルシチョフに交代すると「スターリン批判」、そのフルシチョフが失脚すると「フルシチョフ批判」。ブレジネフが死ぬと「停滞批判」でゴルバチョフが登場した。停滞批判のついでに「覇権主義批判」も持ち出して、それを「今後は干渉しない」宣言にして人気とりをしつつ責任逃れをしたことになる。前任者のだれもがみんな「民族自決」と看板に掲げながら東欧を支配してきたが、ゴルバチョフのソ連はちがう、というわけだ。
 聞こえはいいが、ゴルバチョフは「民族自決」を表看板にして冷戦終結後の混乱に巻き込まれた人々を見殺しにしたのである。もっとも欧州は欧州でゴルバチョフを持ち上げ、「民主化」の美名に隠れて西欧圏拡大のために流血を黙認してきた。東欧の民主化は民主化とは程遠い形態をとってなされたことになる。
 実はゴルバチョフ改革にはいいこともあった。グラスノスチという情報公開だ。このおかげでスターリンの粛清で行方不明になっていた人々の情報が明らかになった。シベリア抑留日本軍捕虜の詳細がわかったのもこのころである。だがこうした評価もバルト地方やカフカス地方への軍事介入でチャラになってしまった。

 自国の民族紛争には介入するが、東欧の民族紛争は「自分たちの運命は自分たちで」と何があっても不干渉の立場をとった。そのせいかどうかは知らないが、ルーマニアのチュウシェスク大統領夫妻は暴徒化した民衆に銃殺された。撃ち合いに巻き込まれたのではなく、暴徒による公開処刑だった。ユーゴスラビアはその後長い間「東西熱戦」の戦場になり、多くの血が流されることとなった。
 これを「長い間おこなわれてきたことのプロセスの一部」というのなら、そして「一度も介入しなかったのが誇り」というのならもう何をかいわんやである。東欧からの報復が怖かったのか、西欧での人気を維持したかったのか、はたまた「自分はいつでも正しい主義」なのか、すべてを「前任者のやったこと」で片づけてしまったのだ。(川上なつ) 

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