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2009年10月28日 (水)

鎌田慧の現代を斬る/第135回 新政権・波瀾の船出と沈みつづけるトヨタ

 新内閣が成立して40日目、衆参両院本会議で鳩山由紀夫首相が所信表明演説をおこった。新しい時代を政治で切りひらこうとする思いがよくあらわれた、好感のもてる内容であった。
 演説冒頭では「総選挙において、国民の皆さまは政権交代を選択されました。これは日本に民主主義が定着してから、実質的に初めてのことです」と宣言されていたが、ここにはチェンジした政治を歴史的に位置づけようという精神がよくあらわれていた。「一人ひとりの強い意思と熱い期待に応えるべく、私たちは『今こそ日本の歴史を変える』との意気込みで、国政の変革に取り組んでまいります。」とも語っている。
 歴代の首相でも、時代の変革を明確に告げた者はいなかった。そういう意味でも新しさを感じることができた。苦心の作といってよい。

 演説で強調されていたのは、「人の命を大切にし、国民の生活を守る政治」を実行しようということだった。これこそまさしく政権を変えた選挙民の願いだ。ブレることなく、今後の政治の基本に据えてやってほしい。
 また「地域のきずな」や「人間のための経済」、「架け橋としての日本」など、開かれた日本にしていこうという意欲もあらわれていた。さらに首相のキャッチフレーズである「友愛」を政治の目標として掲げ、障害者や高齢者、難病患者との共生にもふれている。「弱い立場の方々」とか「少数の人々」「市民」「NPO」などのフレーズが並んだ所信表明は、小泉型の効率・競争・自己責任の政治からの脱却を示している。

 さて、問題点は、憲法について語られなかったことだ。約1万2900字、52分という異例の長さのスピーチに、「憲法」の二文字がまったく見あたらないのは残念である。
 新しい時代は、平和憲法に則っていくという思想が大事なはずだ。「平和憲法を守る」とか「平和憲法は譲らない」などの言葉があってしかるべきだった。
 これは無い物ねだりというものではない。「人の命」や「国民の生活」を大切にしようとするなら、平和が絶対に必要であり、平和と民主主義を語るなら、9条の存在を無視することなどできない。
 また米軍基地の縮小問題や自衛隊の膨張にどれだけ歯止めをかけるとかいう、軍縮の方向性についても、演説ではふれられていない。オバマ大統領が打ち出した「核のない世界」という提案に共感し、非核三原則の堅持にも言及しているだけに、もう少し踏み込んだ日本発の独自な発言がほしかった。新政権で予算の膨らんでいる福祉関連の原資は、防衛の予算削減などでやっていくしかない。その意味でも、重要な項目であった。

 もう一つ残念なのは、労働問題に関連して、人材育成や中小企業の資金繰りなどには言及したのに、非正規労働者という視線がなかったことだ。緊急の課題である派遣労働者の雇用をどう安定していくについては、民主党の躍進を支えた多くの人びとが注目していたポイントだったはずだ。
 具体的な問題は、これから詰めていくのであろうが、首相が問題として認識していないも可能性もあり、今後の政治運営に注目する必要がある。
 また「戦後行政の大掃除」という表現も気になった。安倍元首相が繰り返した「戦後レジームからの脱却」や中曽根元首相がいった「戦後政治の総決算」と言葉が似ているだけに、どこが違うのかを明確にすべきだった。戦後の民主主義は、労働運動や市民運動などの大衆運動でつくられてきた。そうした歴史の否定として、「戦後行政の大掃除」が使われないことを願っている。
 もちろん、ここでは官僚依存行政を批判しているのだろうが、それなら「戦後行政」ではなく、「自民党政治」あるいは、[55年体制がつくってきた官僚依存」とハッキリいわないと、戦後政治の否定にならないか不安になる。
 いずれにしても、これから所信表明に基づいて新しい政治がおこなれることになるはずで、当分は期待とともに監視していきたい。

全文は→「11.pdf」をダウンロード

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