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2009年9月11日 (金)

ロシアの横暴/第23回 ロシア水力発電所爆発のウラ側(下)

 3番目のイスラム系の団体が起こしたテロ説はほとんど無意味である。プーチンは犯行声明が出ていても、以前のようにすんなり認めることが出来ない立場にある。「チェチェンテロリストは撲滅した」からだ。撲滅したチェチェンテロリストがチェチェンから遠く離れた東シベリアで水力発電所を爆破させた、となったらいい恥さらしだ。「テロリストは撲滅したからソチでオリンピックを開こう」と言ったのはなんだったのか、と国際的にも非難をあびることになる。

 これらの仮説のなかで一番まるく収まりそうなのが「補償金目当ての偽造爆破事故」である。どのみち真偽のほどは検証不可能だから、さっさと見舞金を払ってふたを閉めればあとはどうにかなるからだ。と言ってもこんな「ウソー」みたいな話が公式発表になることはない。現在の公式発表は「人為的なものではないが、何かわからない」である。

 ところで犯行声明はプーチンが「否定」したほか、別の角度からみてもたぶん違う、といえる。2006年にロシアから最大のテロリストと指名手配されていたシャミーリ・バサエフという野戦司令官が自らの不注意で起こした爆発事故で死んだ。彼はやることなすことあぶなっかしい跳ね上がりだったので、起こるべくして起こった事故だった。しばらくするとロシア政府が「我が内務省軍は極悪テロリストを殺害した」、と発表した。この発表は公式なので日本外務省のホームページに「チェチェン情勢」として載っている。
 カフカスセンターもこのやり方を踏襲している。彼らの思考回路はお互いによく似ている。常々からテロ予告をやっているが、このたび恰好の事故が起きたから「犯行声明」を出したのだろう。
  そうこうするうちに今度は石油貯蔵タンクで火災が発生した。原因は落雷とあったが、仮にそれがほんとなら、老朽化した設備をほったらかしにしていたことが丸見えである。雷はなにも今年はじめて発生したわけでもないからだ。ただ、今回は人的被害が少なかったので、いろいろ詮索されることもなく、落雷で落ち着いたようだ。
 そのうちにちょっとした事故なら報道されなくなるかも知れない。中央アジアの草原でも似たような事故が起きたらしいが、今のところ日本の新聞には載っていない。

 あっちでもこっちでも火の手があがるのをロシアはどうやって乗り切るのか。もぐら叩きレベルも超えてしまった。
 ある日の新聞に「ロシアでは原油高に甘んじて何もしてこなかったことへの反省がちらほら出てきている」とあった。だが米国初の経済危機が永久に続くことはなく、どんな形であれ回復していくはずだから、その時になれば地下資源の需要も高まってくる、とにかく今ここを乗り切ればまた黄金時代がくる、と相変わらずのユスリ・タカリ精神を全開させているむきも相当あるらしい。
 一方ロシアの有識者は、今更反省したって手遅れだとい出した。反省心に水を差すつもりはないとしても、事実は事実である。(川上なつ)

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