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2009年8月 4日 (火)

●サイテイ車掌のJR日記/福知山線事故、裁かれるべきは誰?

○月×日

 JR西日本の社長である山崎正夫氏(66)が起訴された(7月8日)。
 鉄道事故で経営トップが起訴されるのは極めて異例ということだが、忘れもしない85年の夏、520名もの命が奪われた日航機墜落事故(御巣鷹山)でさえ関係者全員が不起訴となったことを思えば、一歩どころか大きな前進なのか。
 だが、この福知山線脱線事故は起こるべくして起きた事故であり、JR史上最悪の大惨事であったことからも、起訴は然るべきだと思うが、どうなのだろう。
 また、106名もの乗客を死亡させ、500名からの負傷者を出しておきながら、誰一人として刑事責任を問われないこと自体、どう考えてもおかしなことであり、あってはならないことでもある。
 山崎社長は辞任の意向を表明し、8月中には新社長が就任するという。
 さて、山崎社長が起訴された理由を一言でいえば、「ATSの設置を怠ったから」だ。これが業務上過失致死傷罪の構成要件を満たしていると判断されたわけだ。つまり、ATSを設置していればこの事故は防げたという認識があった。すなわち、事故を予測できたかという「予見可能性」があったからと断定されたのである。(ATSについてはこれまでに何度も説明してきたので詳しいことは省かせていただく)
 しかしながら、どうしても腑に落ちないのは、なぜ山崎社長のみの起訴なのかという点であろう。ちなみに、山崎社長以外に書類送検や告訴されていた他の11人については「予見可能性」がなく嫌疑不十分、その内の運転士だけは死亡のためというのがその理由で不起訴処分ということだった。
 ここで「ちょ、ちょっと待ってよ」といいたいのは、今回のこの事態は、私達下々の関係者でさえ「たった1人を起訴するとしたら、この人以外にいないでしょ」というのがみんなの一致した思いだからだ。それは、警察が送検しなかった歴代の経営トップの3人、後に遺族が告訴に踏み切ったのだが、とりわけ初代の井手正敬氏(74)である。それにしても、遺族の方々も皆よく知っているんですね、誰が一番悪いのかを。
 (この井手氏についてはこれまでに吐き気がするほど述べてきたが、これだけはまたいわせていただく)この井手氏こそ、「この事故の背景は」とマスコミ各社が一斉に指摘をされていたJR西日本の「企業体質」、それを築き上げた張本人なのである。
 少し詳しくいえば、旧国鉄の強権的な労務政策を引き継いだ、いわゆる懲罰的な日勤教育や絶対的な命令と服従など、挙げれば切りがないが、何よりも、安全より利益至上主義に暴走した人物に他ならない。いいかえれば、これまでにJR西日本をたった1人で牛耳ってきた最高責任者であるというのが一般的な見方となっているのだ。
 つい先日(7月26日)になるが、神戸地検は遺族、負傷者を対象に起訴、不起訴にいたる理由などの説明会を開催したという。こうしたことは、これまた異例中の異例なのだそうだが、これは遺族らの心情を汲み取った地検の特別な計らいなのだろう。
 会には約130名の参加があり、ここでもやはり井手氏の不起訴に不満が噴出したということだった。これに対しての地検側の回答は「刑法の限界」を繰り返すしかなく、遺族は神戸検察審査会に旧経営陣の処分不当を申し当てる見通しであると報道されていた。
 以上だが、福知山線事故は4年目にして法廷の場での刑事責任追及という新たな局面に入ったことになる。
 「それにしても…」と私がいつも思うのは、遺族や負傷者にとって、起訴される、裁かれるといったことは1つの区切りとなることは確かだが、それによって憤りや無念が消えるものでは決してないということだ。悲しみや苦しみ、それは理不尽にも一生涯襲ってくることなのだろう。
 しかし、闘わなくてはならない。目の前の不幸と向き合いながら闘い続けなくてはならないのだ。
 これらの気持ちは当事者でなければ本当に分からないことだと思う。あぁ、やっぱり、何ともやり切れないとしかいいようがないのである。(斎藤典雄)

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コメント

そんなこと言ったらATSを設置しなければいけないのに未設置のカーブなんて日本中にたくさんあるような気がするんですが他はどうするんでしょうかね。井手さんの努力=安全より利益至上主義がなければJR西日本自体が存続してこれたかは疑問ですし、JR西の株主は他の2社よりも配当額への要求が厳しいと聞きます。金があるなら使うな!配当しろ!と。海外の投資家達は日本の電車には乗らないですからね。本来、安全のためには国がいろいろ立ち回るべきであろうにそこへきて高速1000円さらには無料化だなんて。鉄道などいらんということなんですかねえ。
しかし東日本だって似たようなもの。絶対に知らせ灯式を譲らずブザー式を承知しないですね。さてまた青梅線なのはなぜなのか。

前回のお誘いありがとうございます。もちろんそうなれば願ったり叶ったりなのですが、我が高校からJRに入社した先輩も居ませんし、特段コネがある訳でもなく厳しい道のりのようです。
斉藤さん、どうですか?国労に若手は。紹介してくださーい♪ (笑)

投稿: pod | 2009年8月 4日 (火) 19時23分

podさん、コメントいつもありがとうございます。それにしても、う~む!?今回はどう答えたらいいのか。あんまり難しいことをサイテイな私に振らないでくれよ、かな。とにかく、チャレンジ精神は大事なことです。頑張って下さい

投稿: 斎藤 | 2009年8月13日 (木) 05時31分

無茶振りすみませんでした。
いろいろチャレンジして行きたいと思いつつ目の前の受験から逃げてしまっていますが。。。
ここにコメントするようになってから、赤地に車掌と書かれたネームプレートを見るとついじーっと見てしまうのですがなかなかサイトウ車掌の電車には当たりません。。。ところでもしお会いできたら話しかけてしまってもも良いのでしょうか?

投稿: pod | 2009年8月21日 (金) 17時58分

中央線に斎藤は何人かいるけど、おれはいかにもサイテイだからすぐに分かると思うよ。いつでも声を掛けて欲しい。podですって。でもね、人生相談とかの込み入った話は出来ないからね。そこんとこヨロシク

投稿: 斎藤 | 2009年8月25日 (火) 19時47分

あ、はい
最近暗い話ばかり書き込みましてすみませんでした。。。一番の目的は本当にへのへのもへじかを確認することで。はい、ごめんなさい失礼ですね。
最近は余裕があれば最後部に乗り、吉野屋やオリジン弁当でJR制服のおじさんを見つけると名札をのぞき込み、ダイヤが乱れたら「指令番号は…、豊田運輸区サイトウです」と言う声が聞こえないかと待っているのですがなかなか中央線の車掌さんが多いようで。。。
自分は黒ぶちメガネのオタク顔です。お会いできるのを楽しみにしています。

投稿: pod | 2009年8月27日 (木) 21時14分

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