冠婚葬祭ビジネスへの視線/第34回 ベルコに注がれる大阪国税局の視線
去る7月26日、冠婚葬祭業大手「ベルコ」が葬儀後の遺族に送っていたあいさつ状が、大阪国税局から「領収書」と認定され、印紙税の納付漏れを指摘されたことがわかった。
ことの次第はこうだ。葬儀後、四十九日頃に同社は遺族にお礼の文面をしたためた「あいさつ状」を送付することにしている。文面の末尾には「○月○日付にて金○円を領収致しました」と、ご丁寧に書き記すのだが、これが領収書とみなされたのだ。過怠税額は約3000万円で、すでに納付済み。正規の領収書は別に発行しているとのことなので、単純に考えて必要な印紙税の2倍を支払ったことになる。
ただのうっかりミスに見えるが、しかしこのベルコ、過去に国税局がらみの問題を何度も起こしている。
●1999年→大阪国税局より、積立を中断している互助会会員の積立金を所得に計上していないとして、1997年3月までの3年間に計約33億円の申告漏れを指摘される
●2002年→上記と同じ理由で2000年3月までの3年間に計約28億円の申告漏れを指摘される
●2005年→上記と同じ理由で2003年3月までの3年間に計約31億円の申告漏れを指摘される
「互助会会員」ってなに? と思う人もいるだろう。ベルコは冠婚葬祭互助会組織の業態をとる。葬儀にも結婚式にも使えるような、ひと月2~3000円程度の積立を互助会会員に行ってもらい、企業にもよるが7~10年で満期になると、セット料金で非会員よりもおトクに結婚式や葬儀が行えるという仕組みだ。積立途中で婚姻や死亡があった際でも、残金を納めれば会員価格で式をできることが多い。料金体系の中身は複雑で、不透明な印象を受ける人もいるだろうことは否めない。私も互助会出身だが、内容の理解にかなりの時間を要した。社員なのに。
ベルコが大阪国税局から指摘を受けたのは、かなりの期間払い込みが途絶えた積立金を「預かり金」として計上し、非課税にしていたからだ。通産省は1980年に、5年以上のものについては「雑収入」として所得に計上し課税対象にするよう通達しているのだ。これに対してベルコは、保留会員でも長年経ってから利用する人もいるので計上できないとして争ったが、一回目の分については最高裁で敗訴。二回目は大阪高裁にて係争中、三回目については納税したうえで司法の判断を仰いでいる。
払い込みが止まってしまって5年が経つ、というのは十分にありえる。自分のためにせっせと払っていたおばあちゃんが認知症になってしまった、本人は亡くなって遺族が互助会の存在を知らず違うところで式をしてしまった、すっかり忘れて転居した、等など。連絡がつかないものに関してはしょうがないのだ。解約を促したくてもできないのだから。しかし十分に予想できる事態を考慮せずに、途中で保留になった場合も施行発生までお金をあずかるという契約を交わしていることには疑問を感じてしまう。ただし結局は3回あわせて25億円分もの追徴課税を支払った。契約文面が意図的なものだったのかどうかは謎だ。
そして2009年の今回も、なんだか風物詩のように未納国税を指摘されてしまったのだが、全く違う理由であるうえに未納額も2桁違う。今度は素直に納税したのか、それとも契約内容を変えたのか「預かり金」問題。そして一見マヌケに見える印紙税の納付漏れ。あいさつ状への金額記載は「サービスのつもりが……」と会社側は言っているようだが、うーん、領収書は発行済みなのに、わざわざお礼の文面にカネの話題を入れるって、それ自体が無粋では?
葬儀社はリピーターとなってくれるお客様がつきづらい。そうそう何度も喪主になるものではないからだ。年賀状が出せない(その年にお世話になったお客様はみんな喪中だ)。暑中や寒中のあいさつもできない(遺族が嫌がるだろう)。だから四九日と一周忌くらいしか、あいさつのチャンスはない。有効に使いたいと思う気持ちはわからないでもないけれど、やっぱり引っかかる。払ってくれない遺族に請求をするのがメインで作られたあいさつ状なら、金額にまつわる文面が打ってあっても頷けるけれど。(小松)
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