靖国神社/23回 ライター奥津・英霊の日に靖国で戯れる(上)〈2007年取材〉
8月15日。英霊の日。約2年ぶりの1日取材。年に1回この日だけは訪れてほしくない気持ちが2年前から濃厚になってきていた。真夏に1日中外取材。そして今年は、1人。孤独ここに極まれりである。
極まってしまったものは仕方ないので、とりあえず靖国へ向かう。午前8時50分到着。前日までは、開門と同時に取材を始めるぞと己を奮い立たせていたが、前日の仕事が長引き寝たのは午前2時前。無理していったら正午には1人地獄絵図になると思い、その時間になってしまった。
お盆、夏休み、終戦の日(英霊の日)のトリプルコンボをお見舞いされている靖国は想像通り人が多い。
みんな物好きだな……なんて思いながら、今日の取材ターゲットたちの待つ到着殿へ。と、その前に報道関係者用のリボンをもらいに社務所へ。ちなみに社務所の受付の姉ちゃんはレギュラーなのか行くたびに見る。名刺を箱に入れ、社名を書き、リボンをもらっていたところ、一般の参拝客が報道用関係者用のバッジを貸してとごねていた。一般人は自由に撮影してもよいので、「必要ないですよ」という事務のお姉ちゃんの言葉に耳を貸さずごねて結局借りていた。
今年のターゲットはズバリ「マスコミ関係者」である。
今年は、参院選での自民党の大敗が原因なのか、それとも外交問題が原因なのかはわからないが、安倍首相も閣僚も来ないというニュースが、8月7日~10日にかけて流れていたので議員を対象にしてもおもしろくない。一番の目玉、小泉前首相は出かける用意をしている最中に参拝していたし。結局、彼が首相を辞めても私との間に赤い糸はなかったということを再認識させられた。
しかし、前首相が参拝したとして、今は一私人。ニュース価値は多少落ちるからいいや、ということにした。 長年、靖国ライターとして本までだしたにも関わらず、現役首相が参拝するところを見たことがない。なんてこった。今年こそは今年こそはと思い続けてそろそろ6年目になる。参拝はしないと言った安倍首相がゲリラ参拝でもしてくれないかと少し願うことにした。
とりあえず神社内を漂流していると、報道陣がものすごい勢いで誰かを囲んでいる。とりあえず輪に加わってみたらたばこ臭い。マスコミ人はスモーカーが多いのか。ヤニ臭さに気持ち悪さを感じてそうそうに撤退したが、まず男にも劣らない闘いぶりを見せる女性たちを見て、私のような適当な仕事ぶりではこの世界でのし上がれないということを感じた。
さらにまた漂流していたら能楽堂前に少しの人だかりと何かがあった。近寄ってみると、木製のゲージに入った白ハトたちがいた。どうやら毎年8月15日に白ハトの放鳩式があり、そのために用意されたものらしい。
おぉ、これが例のアレかぁ……これは参加しないともったいないということで、9時40分ころから並び始める。
ゲージは6個あり、全部で100羽程度入っているらしい。狭いゲージの中でケンカするハトもいればおとなしいハトもいた。白ハトはなんだかんだいってかわいい。かわいいが、激しくくさい。鳥小屋の匂いがして一瞬もうろうとしたが、ハトを飛ばすために我慢した。午前10時。順番に白ハトを渡し始める。
私もハトをもらい「飛ばすぞ、飛ばしちゃるけん!」と気合いを入れ両手で持っていた。が、私のハトは元気がいいのかなんなのか、手中で暴れる暴れる。
暴れた末に、なんと私の手から離れ飛んでいってしまった。持っていた時間は約数十秒。20分も待ったのに、飛ぶときはあっという間で切なさを感じた。さようなら、白ハト。たぶん、誰よりも先に飛ばしたはず。
私が飛ばしてしまっても白ハト配給は続き、全員が配り終わった後、南部利明宮司による「ありがとう」という言葉とともにハトを飛ばした。たくさんのハトが飛ぶさまはまさに「ロート製薬」のCMを彷彿とさせるもので爽快感が残った。その瞬間を奇跡的にカメラに押さえたのだが、素晴らしい、私のカメラスキルが50ポイントくらい上がったところで、放鳩式は終了。
10時28分。警備員の「車とおりまーす」という声が増え始め、報道陣が少し動き始める。
10時35分。黒塗りの車が続々とやってくる。11時から「みんなで靖國神社に参拝する国会議員の会」(なんど書いても、聞いても、おマヌケな名前だ)が集団で参拝するので、そのために集まってきているのだ。
車は靖國会館のほうへ行き、議員たちはそこで待機。車を見ると、ほとんどが品川ナンバー。公用車ということだろうか。中には、警視庁のステッカーが貼られた車や、ピーポくん(警視庁のマスコット)のぬいぐるみが置かれた車。さらには、「COOLBIZ」というステッカーが貼られた車まで。個人的に気になったのが、トヨタのセンチュリー。皇室よろしく、カーテンが白レース。どうやらこの車は、トヨタの最高級乗用車だそうで、主に、皇室(だから白レースなのか!?)、官公庁の公用車などに使われている車だそうだ。車に興味のない私にも、あれは高そうだと感じさせる威厳を放っていた。
入ってくる台数が多く、会館前での乗降ができなくなったのか、到着殿近くで下りてから会館へ行く議員も多かった。
午前11時。議員たちがぞろぞろと本殿へ向かう。心なしか報道陣の数が少なく思えたのは気のせいだろうか。(奥津裕美)
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