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2009年8月 6日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第21回 従軍取材で感じた住民の視線(下)

 隊長と一緒に一軒の民家に入った。米兵たちは家の中に土足であがりこんでいった。アフガニスタンは日本と同じで家の中では土足厳禁だ。聞こえるか聞こえないかという音で、家の若者がちっと舌を鳴らす。
 客間には近隣の村の村長たちが集まっていた。その中の代表らしい黒い服を着た四十台の男は米兵に愛想を振りまいている。他の四人の村長たちは少し怯えているように見えた。
 「出来る限りの協力は惜しみません。武装勢力が入ってきたらすぐに知らせます」
 黒服の男は協力的だ。村長の一人が「村の近くで爆弾を見つけました」と言った。隊長が、では、明日にでも一緒に見に行こうと言う。村長は「その変わり、私の息子を基地で働かせてもらうという件よろしくお願いします・・・」と手をもむ。支援を引き出したい村長側と、協力を得たい米軍側で狐と狸の化かしあいだ。

 隊長は支援の目的を「支援を通じた教育だ」と言う。
「アフガン人の多くは自分の国の状況を知らない。彼らはアメリカが悪だと教えられている。だから、支援を通じて彼らを教育し、アメリカがいい人たちだということを伝えたい」
いわゆる人心懐柔政策というやつだ。旧日本軍の宣撫工作に似ている。しかし、本当に占領している側の支援でアフガン人の意識が変えられるのだろうか。
 私は従軍終了後、バグラム基地の近くのPRT支援を受けている村に向かった。
村で取材を行ってみると、取材拒否が続いた。誰もがカメラを見るとインタビューを断る。数時間探し回り、一人だけインタビューに応じてくれた。アリさん(仮名)は英語で受け答えをした。カブールで働いていて、帰省していたのだと言う。
 「怖いからさ!米軍に僕たちがアメリカを非難したなんて知られればきっと殺される」
 アリさんは怒りをあらわにして訴えた。米兵に家の中を強制的に捜索されたこともあると言う。アフガニスタンでは女性は夫以外に顔を見せないという風習がある。そのため、家族以外が家の中に入るのを極度に嫌うのだ。
 「米兵は支援という口実で、武器を持って村に入ってくる。実際はテロリストの捜索です。私たちはテロリストじゃない。断れば何をされるか分からないから、仕方なく支援を受けて入れているだけです」

 どうもPRTは受け入れられているように思えない。けれど、支援の増加はオバマ政権のアフガニスタン政策における土台の一つだ。ブッシュ政権時代の「テロリストは殺せるだけ殺す」の政策が大失敗してかえって住民の反感を煽り、タリバン参加者を増やしてきた経緯がある。その対抗策としてきて持ち出してきたのだ。
 PRTに関わっているのは軍だけではなく、USAID(日本で言うJICA)も立案などに大きく関わっている。けれど、ペシャワール会やJVC(日本国際ボランティアセンター)を始めとするNGOを見てきたが、あまりにも支援の仕方がお粗末だ。
 支援というのはハコモノを作って、モノをばら撒けばいいという話ではない。地域の文化や風習を理解し、人々が求めて、それで初めて成立するのだ。
 PRTが道路を作っても通行の優先権は軍隊にある。救急車も消防車も、軍車両を追い越したりは出来ない。学校建設に関しても、PRTが作るのは基本的に男女共学の学校だ。市民の中には「軍隊がパトロールしやすいから作ったのさ」という声も聞かれる。
保守的なイスラム教徒が大半を占めるアフガニスタンでは学校建設も「欧米の出先機関」と建設自体に反対する声も大きい。

 アフガニスタン人は歴史的な経緯から欧米諸国を伝統的に目の敵にしている。外国軍はPRTを通じて地元住民の支持を得る狙いだが、現実的には軍の行う支援そのものに対して反感が起きているのが現実だ。
 日本もPRTに文民を派遣しているが、その点は分かっているのだろうか?見てもいない人たちの仕事を批判したくないが、私には賢い判断とは思えない。
 従軍前に、わたしはタリバンの元高官のムトワキル氏にインタビューをし、日本のPRT参加についてたずねたことがあった。
 彼は祈るようなしぐさをして、こう言った。
 「支援をするのにどうして軍服が必要なのか。住民はPRTと普通の兵士の見分けがつかない。皆怯えているのだ。PRTはタリバンのターゲットになっている。友人である日本の人たちが攻撃を受けないことを祈ろう」(白川徹)

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