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2009年7月23日 (木)

『庄幸司郎 たたかう戦後精神』

41u4rz25k1l_sl500_aa240_  先月末、『庄幸司郎 たたかう戦後精神 戦争難民から平和運動への道』(松本昌次 編)が出版された。彼の遺稿を中心に集めたものだ。庄さんが亡くなってから、はや九年。ネット上では庄幸司郎さんを知っている方は少数派かもしれない。

 建設会社の社長であり、市民運動家であり、井上光晴氏や野間宏氏など多数の文化人と深い親交を結び、出版や映画事業などに出資を惜しまなかった人物だった。
 このWEB版の月刊『記録』も、もともとは庄さんを発行人として月1回印刷していた月刊誌だった。しかし92年に赤字のため休刊。94年から弊社が引き継いだのである。

 月刊『記録』の再刊と時を同じくしてアストラでアルバイトを始めたわたしは、月1回、雑誌の発送作業の手伝いとして庄さんの会社に通った。中野にあった事務所の出入り口近くで、ときに庄さんは昼間からビールを空け、わたしにも勧めてくれた。「大畑君は学がないねー」と、よく笑いながらしかられたものだ。一筋縄ではいかない人物で、おっかなくて、でも人懐っこく寂しげな笑みが印象的だった。

 『庄幸司郎 たたかう戦後精神』には庄さんが書いた次のような一文がある。
「一見すれば、日本の強力な軍事力に押さえこまれ、権力者や為政者のいいなりになっておとなしく従っているように見えた被支配民族の人びとでしたが、己が、その立場に立たれてはじめて、それらの人びとの長い年月の苦渋の幾分かを私は知ることができたと思っています。満足に言葉も通じ合わない為政者と話し合ったり交渉したりして自分たちの命を自分たちで守るほかありませんでしたが、私はそれで良かったし、そのおかげでいまだにこうして六十三歳になるまで生きてこられたのだと思います」
 この文に続けて、彼はもし武器を持っていたら逆に14歳で死んでいただろうと回想し、「私は非武装の日本国憲法第九条や前文の精神や理念に現実を少しでも近づける努力をするのが、大人として当然の義務だと思っております」と書く。泥棒や強姦を目的に、日本人の家へと乱入するロシア兵たちと渡り合ってきた経験が書かせた言葉だからすごい。重みが違う。

 実際、庄さんは運動においてブレなかった。自分が被るリスクなど恐れていなかったのだ。
 一度、中国人留学生の保証人を頼みに来た人を見たことがあるが、即座に彼は快諾した。訪問からわずか数分、留学生の名前すら確認しなかったと思う。旧「満州」の大連に生まれ、敗戦で引き揚げるまでの14年間に見聞きしてきた日本人の行為を謝罪したいとの思いだったのだろう。
 そうした行動の前には、左や右というカテゴリー分けなど、何の意味もないと感じたものだ。ただ人間としてかっこよかったのだから。

 本書には戦中から戦後にかけての自伝的な文章や、彼の市民運動へのかかわりに触れた文章などが収録されている。ヘビーな生活をタフな精神と行動力で跳ね返す生き様は、混沌とした時代を生きる私たちのエールにもなるだろう。(大畑)

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コメント

最近,貴HPを知り,興味深く読んでおりましたが,庄先生のご関係と知って驚きました。不勉強ですみません。

投稿: 永田 | 2009年7月25日 (土) 10時27分

永田さま、コメントありがとうございます。運動でも、執筆でも、庄さんの高みははるか遠くにあり、お恥ずかしい限りではあります。ただ、ネット上であれ、『記録』を残せたのはよかったと感じおります。今後ともよろしくお願いします。

投稿: 大畑 | 2009年7月25日 (土) 20時40分

庄さんはウチの大学の恩師の友人でした。恩師は朝鮮問題に深く関わってまして、『記録』執筆者の常連の1人でした。90年代前半でしたか恩師のお使いで事務所を訪れました。恰幅のいい人で、用件と伝えると、ビールにつまみが出てきまして、「ちょっと、これから仕事があるんで話はできないが、ゆっくりしてってくれ」と云われました。庄さんは、奥さんが亡くなった後を追ってすぐ黄泉の国に旅立たれましたが、今から思うと「糖尿」の気があったのではないかと思ってます。しかし豪胆なおもしろそうな人だと理解できました。

投稿: jyoudanya | 2011年7月12日 (火) 04時42分

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