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2009年7月28日 (火)

トヨタが労使一体化のツケを迫られる

 政治は大きな曲がり角を迎えているが、トヨタの状況が「カイゼン」された様子はない。先月末には、ゼネラル・モーターズがトヨタ自動車と共同出資する合弁会社「NUMMI(ヌーミー)からの撤退を発表した。
 84年に設立されたNUMMIは日本車排斥運動の人身御供だった。日本車の輸入拡大により働き口がなくなると訴えた労働者に、日米協同で工場をつくって差し出したのである。当時、石橋を叩いても渡らない社風だったトヨタは、米国進出に消極的だったが、リスクの少ない合弁会社から米国生産への比重を拡大していった歴史がある。

 そのためNUMMIは日米自動車友好の象徴といえる。その象徴さえ維持できないところに、自動車産業の不安がのぞく。GMの撤退によって、4600人が解雇される可能性も高まり、工場の継続には暗雲が立ちこめている。また従業員が全米自動車労組(UAW)に所属しているため、トヨタが自社の米工場では、数十年間、労組を回避してきた厳しい労務交渉がこれから待っている。

 本来、労働者は組合をつくって闘う権利をもっている。そうした労組の牙を労使一体化路線で潰してきた責任を、トヨタは意外な形で支払うことになりそうだ。
 トヨタ系企業が多い愛知県三河地方で3~5月に開設された「派遣村」の相談者の3割が生活保護を申請したという。派遣労働者の批判にたいして、トヨタは期間従業員への格上げを検討している。しかし、まだ不十分だ。企業が無責任に放り出した労働者を、財源の少ない地方行政が面倒をみるという構図を、もっと労働者が安心できるシステムに変えていく必要がある。

 富士スピードウェイでのF1解散撤退は、トヨタの場当たり主義の象徴といえる。ホンダ系の鈴鹿サーキットで開催されていたF1レースを強引に奪い取り、200億円をかけてコースを改修し、07年から開催した。ところが観客の輸送などで大トラブルを発生して批判を浴びることとなった。08年には観客数を制限することで事なきを得たが、バス運送費がかさみ赤字になったという。その揚げ句が開催中止である。
 そもそもトヨタがF1に乗り出したのは、F1で総合優勝を重ねたホンダに対抗したかったからだ。87年から鈴鹿で開催してきた日本GPが定着したことも、トヨタにとっては悔しかったのだろう。

 ホンダは業績の不振を受けF1への参戦をあきらめ、09年から富士と隔年で開催する予定だった鈴鹿の日本GPを維持することにした。一方、とにかく一度はF1で総合優勝したいトヨタは開催を止め、参戦を残した。
 どちらがモータースポーツへの影響を考えてかは明白だ。F1の名門でもないトヨタが撤退したところで、毎年繰り返される撤退と進出の一部に過ぎない。ところが日本でのF1開催を手放せば海外でおこなわれる可能性も高く、国内のファンはレースを生で見られる機会をなくしてしまう。
 このような企業のエゴも、いずれ「精算」を迫られる日がくることだろう。(談)

全文は→「8.pdf」をダウンロード

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