書店の風格/第37回 火星の庭
去る6月26日、仙台の「Book! Book! Sendai 2009」に参加してきた。「Book! Book! Sendai」は、詩人の武田こうじさんが代表を務める「杜の都を本の都にする会」で催すイベント名。仙台で、「人生にとってかけがえのない本との出会いを伝え、考えていこう」と発足した会だ。なぜこの素敵なコンセプトをもつ会に接触できたかというと、アストラ刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』の著者、塩山芳明氏と、本の帯絵を描いてくださった漫画家、いがらしみきおさんのトークイベントがあったからだ。司会はベテラン・南陀楼綾繁さん。
トークイベントではいがらしさんがユーモア溢れるトークを炸裂させたり、塩山氏が地元を撮影したビデオを流したり(自作ナレーション入り!)、最後にはじゃんけん大会の優勝者にいがらしさんのオリジナルTシャツをプレゼントしたりと、賑やかな内容。それについては「Book! Book! Sendai」の公式ホームページに詳しいので、読んでみてほしい。→http://bookbooksendai.com/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=43
今回おすすめする書店は、「杜の都を本の都にする会」のメンバーで、このトークイベントの主催となって下さった「火星の庭」。
古本をメインとしたブックカフェで、ランチもやっている洒落たお店である。
仙台駅をアエル側に抜けて、駅前通りに出る。5分ほど歩くと大きな通りに出る。仙塩街道だ。信号を左に曲がって一分ほど歩くと、左手に看板ともオブジェともいえない、鉄製のお鍋のような茶色いものが立てかけてあり、「火星の庭」と書いてある。気づかずにそのまま通り過ぎて錦町公園まで来てしまったら、来た道をちょっと戻ろう。
お店に入ると、右側がカフェスペース、左側に本棚がある。真ん中の仕切はディスプレイ棚が使われていて、チラシのスペースとして活用されている。
本は丁寧な品揃えだ。特に美術系は豊富で、美しい画集やデザインの優れているものなどが店全体に鮮やかさをもたらしている。手作り風味溢れる飾り棚や紙芝居も雰囲気作りに一役買っている。文庫は人文社会系が魅力で、一般の書店では到底お目にかかれないレアものもところどころにあり、ついついじっくり見てしまう。店主自身の蒐集家ぶりが滲み出ている棚であった。
カフェではお茶やお菓子はもちろん、ランチメニューもあり、豆の沢山入ったココナツカレーがとても美味しかった。ライスが玄米なのも、何だか優しい。チキンなど肉類が入っているわけではないのに満足感はばっちりで、お得な気分を味わえる。女性にはたまらないメニューだと思えた。
客層はやはり女性が中心か、と思いきや女性あり男性あり、団体客ありお一人様ありと様々な層をキャッチしている。一人新聞と古本を傍らにコーヒーを飲むおじさまの隣で、女子大生とおぼしき4人組が笑いあってお茶していたりする。選書にこだわりがあってカフェメニューも凝っていて、要するに割と個性の強い店のはずなのだが誰でも入れる気軽さがあるのは、店主のマジックかそれとも仙台マジックか。東京にも面白いブックカフェはあるけれど、客層が限定されてたり常連さんのたまり場になったり、割と内輪で成り立っているところがある。その善し悪しを問うつもりはない。でもブックカフェを特別視しないで、エキチカだからとかカレーが美味しいからとかゆっくり新聞が読めるからという理由で人が集まってきたら、きっとそこで読書の世界を変えるような動きがおこるような気がする。そんな妄想が揺り起こされる本屋さんだった。(奥山)
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