靖国神社/21回 みたままつり2007(上)
今年もみたままつりへ行ってきた。遊びで行けば楽しいまつりも、仕事で行くとなるとあまり気がすすまないというのが本音だ。もう何回目になるだろうか……。
しかも今年は台風接近中で、ちょうどまつり期間中に関東に上陸するというではないか(実際には上陸せず東の方へそれて去っていった)。
さすがにネタも切れてきたし、面倒だと思っていた矢先、奉賛会から会報が送られてきた。その中にみたままつりの案内が入っていた。いつもは靖国のホームページや、駅に貼られているポスターしかみていなかったのだが、その送られてきたものを見ていたら裏表紙の端に2ヵ所黄色いものがあるのを発見。
何かと思ってよく見てみると、なんと遊就館無料拝観券と、粗品引換券がついているではないか。遊就館はみたままつり期間中のみ有効。粗品引換券は昇殿参拝受付でもらえるとのこと。これは数年前の福引きを思い出させるネタではないか! ということでさっそく初日(7月13日)に行ってきた。
平日の午後2時くらいだとまだ露店も活気が少なく、客も少ない。浴衣姿の若者たちは夕方から増えるのだろう。そのかわり、高齢者が多い。
露店で何かを買うのは取材が終わってからということにして、まずは粗品をもらいに昇殿参拝受付所へ。
神門をくぐり受付へと向かっていると、能楽堂で奉納芸能が行われていた。だいたい30分から1時間くらいの間隔で、詩吟、マジック、バレエ、ダンス、古武道などなど、期間中たくさんのイベントが行われている。この中に、つのだ☆ひろコンサートも含まれている。このコンサートについては、2005年の記事でその模様をレポートした。どのようなコンサートなのかを知りたい方は、是非とも『誰も知らない靖国神社』(アストラ)を買って読んでください。
自著の宣伝をしたところで本題に戻ると、ちょうど私が行った時間帯に行われていたのは浪曲だった。浪曲という名称はよく耳にするが、生で見たことはなかった。
浪曲とは浪花節のことで、軍書、講釈、演劇、文芸作品に節をつけたもので、三味線に合わせて独演するものらしい。この日公演していたのは、春日井梅鴬さん。見た目60代のおばあちゃんだが、これがすごかった。
年齢を感じさせない語り口、30分間ずっと唄いっぱなしなのに息が乱れない。その姿に圧倒されながら、浪曲はHIP-HOPと同じ路線なのではないかと感じた。リズムは三味線が担っているというもののほとんど自分でリズムを奏でている。さらに彼女は唄いながら少し振りも付けていた。おばあちゃんの奏でるラップ(浪曲ですが)。愛だの恋だのわーきゃー言いながら振りだけが大袈裟な昨今のジャパニーズHIP-HOPよりも浪曲の方が聞き取りやすいし内容も面白い。それに世界観も本場のアメリカンHIP-HOPに近いのではないか。とにかくそのソウルフルなばあちゃん浪曲師にしびれてしまった。
とりあえず浪曲を見終わり、昇殿参拝受付へ。靴を脱いでげた箱に収める。ひっきりなしに訪れる人の多さに、靴が盗まれやしないか少し不安に。まぁ、靖国で盗みするヤツなんていないか。ここの参集殿は新しく、最近できたものだ。以前、霊能者と行った際は、たしか社務所で受付をしたような。
今回の企画目的その1であるの粗品と交換するためにチラシを出す。すると出てきたのが「みたままつり ぼんぼり揮毫選集 第四十三輯」はっきりいって読めない漢字のオンパレード。頭が悪いと思われるのもなんなのでフォローすると、漢字の読み書きは得意な方だ。だが、これはない。読めない漢字を使うとは何事だ! とタダでもらったにもかかわらず心の中で文句をたれてしまった。
中身はポストカードが10枚入っていた。ちなみに、「揮毫」とは、文字や書画を書くという意味があるようだ。たしかにかけぼんぼりは著名人が手書きで絵や字を書いている。なるほどね。
さて、粗品をもらうだけではつまらないということで、数年ぶりに昇殿参拝をすることにした。
申し込み方法は至って簡単。名前と住所(親族に合祀されている人がいればその人の名前を書く)を書いて、お金を入れる。お金はいくらでもよいそうだ。そして、受付の後ろにあるいすに座って待つ。これが個人参拝の申し込みの流れだ。
それから案内があるまで待つのだが、その間に団体参拝者が一グループ表れた。彼らが団体参拝者用の待合いスペースへ座ったところへ、数人の男女が彼らの前へ立った。何事かと思い見ていたらなにやら演説を始めたじゃないか。
尾辻秀久候補(現時点)がその団体客に対して、演説、そして、文部科学省の官僚の応援演説、さらに藤井孝男候補の演説……なんというか、いいのかこんなところで。そりゃあ、候補者にとっては団体客の顔が票に見えるかもしれないが、選挙に受かるためならどこで演説してもいいというわけではないような気もするが、尾辻秀久はあの「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」会員。靖国からすれば、靖国に好意的な人間が境内で演説することぐらいたいしたことではないということか。選挙の道具に使われても容認する靖国の懐の広さに非常に感激した。
だがしかし、である。百歩譲って、参院選で受かった暁には国民の期待に応えることを約束したとして、なぜ団体客にしか名刺を配らない。なぜ個人客にも「よろしくお願いします」と言わない。いわれても一票入れる気はさらさらないが、本当に受かりたいならそれくらいしろ! となぜか憤りを感じてしまった。(奥津裕美)
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