書店の風格/第35回 書泉グランデ
たくさんのファンが付いている書泉グループ。
豊富な品揃えはもちろんだが、ファンが付くのはそれだけが理由ではない。デザインが2~3ヶ月に一度は更新されるビニールバッグや、動物柄、花柄などバラエティ豊かな栞も本読みの心をしっかり捉えて離さないのだ。
そんな書泉グループの一店舗、書泉グランデは神保町にある細長い印象のビル。古書店や専門書店などが立ち並ぶ中でも異彩を放っているのは、大型の新刊書店にもかかわらず得意ジャンルがガッツリ確立されているからに他ならない。恵まれた立地と規模を惜しみなくさらけ出すのは、「鉄道」と「ミリタリー」に対してである。そんな心意気に、男性ファンは大いに応えるのだ。
最上階の6階に降り立つと、昔ながらの書店の雰囲気に心和むと同時に不思議な感覚に襲われる。乗り物とミリタリーでワンフロアが構成されている光景なんてなかなか見ることができない。弊社から出ている斎藤典雄氏の『車掌の本音』シリーズも常時置いて下さり、日本で一番売っていただいている。ここは鉄道ファンにとって、情報の聖地なのだ。ネット社会になった今でも変わらない、アラカルトな魅力がある。
さらにコミックやエンタメ系もかなり洗練された品揃えがされている。地下1階の売場は独特で、階段を下りれば脇のスペースはサインの山、エレベーターを降りるとタレント本や写真集、メディア論などのコーナーになる。現在は「Bejean + Beppin School バックナンバーフェア」を開催していて、なかなかない試みなので日頃興味のないジャンルだとしても観ていて本当に楽しい。この書店のフェアには常に注目しておいて損はない。
奥の小部屋めいたところに進んでいくとコミックの棚が四方を占め、薄暗い迷宮に迷い込んだような錯覚に陥る。ジャンルを問わず様々なコミックが目に飛び込んできて、しかし安らいでじっくり選ぶ心境になれるのは落ち着いた照明のおかげだろう。どうしても「溢れる」印象のあるコミック棚は様々な色がチラチラと目に入ってくるが、それが抑えられている。
大規模書店にして、専門店。そんな贅沢をかなえ、さらにお客様の支持を得ている書泉グランデ。今日も売り手と買い手の静かなコミュニティゾーンとして機能している。(奥山)
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