書店の風格/第33回 タコシェ
奇跡のような書店だ。
中野ブロードウェイの中、三階直通のエスカレーターをのぼる。まわりはまんだらけだらけ。そしておもちゃ屋、明屋書店などを抜けて行くとあるのが「タコシェ」。自費出版、少部数流通の雑誌や書籍を中心に集めた本屋さんだ。この国のプレスの、逆からの縮図。表現が好きだと、活字が踊るような本ばかりがひしめき合っている。ここに来ると、日頃感じている出版界の不況だの活字離れだのネットに読者が流れていっただのという議論が吹っ飛んでいってしまう。みんな、勝手に元気なのだ。本当に頼もしい。
縦に長い店内はどう見ても5~6坪にしか見えないが、1万点ほどの品揃えだという。一点ものが多いからだろう。とはいえ、店内中央に細長く置かれた平台には常に何十点もの雑誌・書籍が平積みされている。特に記憶に新しいのが徳島発信の『ハードスタッフ』12号。
11号から数えて、なんと15年めの発行だ。これが平台におよそ50冊、積み上げられている風景は圧巻だった。普通の書店であれば並べるのが非常に難しい自費出版の雑誌が、ここでは大事かつものすごい売れ行きを見せるのだ。
最近では編集家・竹熊健太郎氏が責任編集をつとめる『コミック マヴォ vol.01』。密かに話題沸騰だったが、やはり買うならタコシェかな、と思わせる。
塩山芳明氏の新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』も発売当初から置いていただき、一般書店・チェーン店では考えられないほどの部数が売れた。書店さんとお客様と、そして著者。全ての顔がかいま見える表現系スケルトン空間が、確かに中野にある。(奥山)
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