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2009年4月23日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第15回 オバマの勘違いとドロ沼化

 2009年4月20日、再度アフガニスタンに入った。
 砂と調味用スパイス、それに糞尿が混ざった匂い。この少しすえた匂いを嗅ぐと、「ああ、また来たんだな」と感じる。
 オバマ政権が誕生して以来、初めてのアフガニスタン取材だ。オバマ大統領はアフガニスタン政策において、ブッシュ政権との違いを打ち出している。「穏健派タリバンとの対話」「復興支援の強化」などだ。前ブッシュ政権の「ともかくテロリストを皆殺しにしろ」という姿勢からは、だいぶ現実的になったように見える。
 では、アフガニスタンでオバマ政権はどのように受け止められているのだろうか。アフガニスタン問題は前ブッシュ政権のころからアフガニスタン人という当事者を抜きにして語られることが多かった。
「テロリストはどこにいるのか」「治安が悪くなっている」「ケシの栽培が増加している」
 どれも、外国人にとってのみ重要なことだ。外国人の言う「テロリスト」は、いうなれば村の中にいる反外国人感情をもつ若者に過ぎない。治安が悪いといっても、それは外国人にとってだ。30年以上もまともな経済体制が無いのだ、強盗や盗賊には慣れっこだ。ケシは唯一の現金を得る手段だ。外国の圧力でケシ畑が焼かれれば焼かれるほど自分たちの生活が悪くなる。
 では、オバマ政権はどうか。
 オバマ大統領の政策は一見、優れているように見えるし、実際私から見てもかなりイイ線をいっている。けれど、「穏健派タリバン」とは一体なんぞや?
 ここにアメリカの大きな間違いがある。現在武装攻撃を行っているタリバンは2001年の政権崩壊時にトップにいたオマル師を頂点とするタリバンとは別物だ。本家のタリバンはアメリカの軍事作戦でパキスタン国境を越え、部族地域に身を潜めている。アメリカ軍も掃討作戦を続け、国境を跨いだ越境攻撃を続けている。
 現在アフガニスタン国内で活動しているタリバンは、空爆の被害者の遺族のことだ。親族を殺された怒りに燃える復讐者たちだ。彼らは4、5人のグループで指示無しに自立的に攻撃を仕掛けている。指揮系統が無いのだから、殲滅しようがない。
 アメリカが仮に部族地域にいるタリバンと交渉し、何か協定を作ったとしても、実際に動いているタリバンには何の影響も無い。
 街中で何人かにインタビューを試みた。
 シャラナオで文房具屋を営むジマッドさん(39歳)は言う。
「タリバンとの交渉は無理さ。うまくいきっこない。外国人がいなくなるまで戦いは続くと思うよ」
 他にも、数人に聞いてみたがタリバンとの交渉に関して希望的観測を持つことは難しいのだろう。カブールの人は基本的にアメリカより、反タリバンが多いのだが、やはり現実的に難しいのだろう。
 カルザイ政権は昨年の9月にサウジアラビアで、タリバンとの交渉の場を持ったことがある。協議の結果は闇の中だが、やはり難しいのだろう。
 最悪、協議の結果アフガニスタンの閣僚にタリバン出身者を向かえた上、攻撃が全く止まない可能性もある。
 オバマ政権にしろ、ブッシュ政権にしろ、やはりアフガニスタンの特殊な状況に対する事実の誤認が目立つ。
 しかし、現場で働く軍部は現実的で、軍による復興支援や地方の部族長の取り込みに力を置いている。部族長を見方につけるため、見返りとしてバイアグラを配っていた、という珍事まであった。
 けれど、昨年従軍をして復興支援の現場を見るとやはり現地の文化や風習に対する理解が甘い。詳しくはバックナンバーを参照してほしいが、支援をしながら反感を招いているという感じだった。
 アメリカの行動を見ていると、やはりこのカウボーイの国が異なる文化や宗教を理解するのは無理なのでは、とすら思えてくる。(白川徹)

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