« 書店の風格/第32回 紀伊国屋書店大手町店 | トップページ | SMAP草彅(なぎ)剛君の扱いは正当だったのか »

2009年4月28日 (火)

鎌田慧の現代を斬る/第131回 フランスで敗北したトヨタ

 さて、今月もトヨタは坂道を転げ落ちるがごとく、業績を悪化させている。連結世界販売台数は6年ぶりに700万台を割り、ゴム・樹脂などを材料とする自動車部品を製作するトヨタの三次下請け「ホーコー」が21億円の負債を抱えて倒産した。従業員100人で売上げが年間15億円、それでいて負債が21億円という。設備投資の負担が大きかったと報じられている。
 これは増産を見込んでの設備投資だったのだろうが、自社だけの判断だったかは微妙だ。これまでもトヨタは下請け企業に設備投資を押しつけたうえで、過剰なコストカットを要求しつつづけてきたからだ。
 トヨタは2002年ごろより金属でつくっていた自動車部品を樹脂に変えている。この会社ではドアモールやサイドプロテクターなどを加工していたが、この樹脂化の流れに乗せられた可能性は高い。
 いずれにしてもトヨタの3次下請けの破産は、ほかのメーカーにも波及しそうだ。気になるのは労働者である。3次下請けは日系ブラジル人の派遣労働者が多い。関東自動車など車体メーカーをはじめとする1次下請けは期間工が多く、2次下請けになると派遣となり、3次になると日系ブラジル人、4次になると中国ベトナム人の研修・実習生という四重構造になる。すでに日系ブラジル人の雇用状況は壊滅的で、職のないまま帰国もままならない状況に置かれ、政府は帰国の旅費30万円を支払うから、もう二度と日本にくるな、と追い払っている。自己チューなやり口だ。
 一方で理事長にトヨタ自動車の名誉会長の豊田章一郎が座る、トヨタのエリート養成校・海陽学園では初の高校生が誕生した。「日本のリーダーを育てる」ことを目的に、中高一貫校として開校してから4年目を迎えた。ことしの新入生の入学式では、中島尚正校長が「勉強は自らの意志で努力するもの。決して受け身にならず、自発的に行動することを忘れないでほしい」(『毎日新聞』09年4月6日)と語ったというが、会社のために役立つ以外の意志は一切排除するトヨタの学校が「自発的な行動」を求めるのは皮肉である。
 フランス・オナンのトヨタ工場では、操業停止の補償巡ってストライキが起こり、経営陣は労働者に完全に屈服した。この労働争議が激化した理由の1つに、野中副社長の侮辱的な発言があると報じられている。
 労働組合の幹部には、ストで名前が売れてよかったと皮肉をいい、「労働なくして給料なし、これはトヨタグループにとっての原則であり、企業にとって当たり前のことのように見える」とも主張した。
 トヨタにとって労働者とは、その程度のものでしかない。売れなければ勝手に賃金を削り、イヤならでて行けばいいと居直る。一方で、豊田家の威光だけは、守りつづける。労働者差別と民族差別と創業家の神格化に支えられた企業が、いま「日本のリーダー」を育成しているのだから怖い。
 自由と自主性を重んじるフランスで、労働者がトヨタに勝利した意味は大きい。徹底した管理で下請けと労働者を押さえつけ、ひたすら会社を大きくするだけの経営はもう限界にきている。そのことを経営陣も悟る時期にきている。(談)

全文は→「kamata.pdf」をダウンロード

|

« 書店の風格/第32回 紀伊国屋書店大手町店 | トップページ | SMAP草彅(なぎ)剛君の扱いは正当だったのか »

鎌田慧の現代を斬る」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122338/44820515

この記事へのトラックバック一覧です: 鎌田慧の現代を斬る/第131回 フランスで敗北したトヨタ:

« 書店の風格/第32回 紀伊国屋書店大手町店 | トップページ | SMAP草彅(なぎ)剛君の扱いは正当だったのか »