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2009年3月 1日 (日)

鎌田慧の現代を斬る 亡国者たちの右往左往――麻生・小泉・竹中かんぽ・朝日新聞のヘンな関係――

 麻生政権は悪名高い森喜朗政権の支持率5.7%にますます接近し、毎日新聞(2009年2月23日)の調査では11%を記録した。日本テレビの調査では9.7%と2桁を割っており、政権がいつ崩壊してもおかしくない状況となった。野党どころか与党内からさえ首相辞任まで求められ、マスコミからは、いつまでも権力にしがみつかず解散で決着をつけろと求められている。
 麻生を担いで選挙に勝つという自民党の自己判断のなさは前回でも触れたが、もはや解散しても選挙を戦えない金縛り状態である。自縄自縛断末魔政権といえる。自民党政権の崩壊は時間の問題だからいいとしても、その間の日本を覆いつづける無力感は大きな問題だ。
 そんな居座り首相の「お友だち」である中川昭一前財務・金融相の酔いどれ記者会見が国辱ものだと批判された。しかし麻生政権自体が国辱なのだから、その盟友が国辱であっても、べつに不思議はない。そもそも中川議員のアルコール依存の激しさは、マスコミの常識だった。
 08年のスペイン国王歓迎のための宮中晩餐会では、「宮内庁のバカ野郎」と怒鳴って退席している。これとおなじような失態はたびたびだったが、大きく取り上げた報道はなかった。記者の批判精神は酔っ払っていたといわざるをえない。さすがに海外での記者会見では酔っぱらいぶりを隠しようがなく、海外メディアの批判報道から火がついて辞任となった。この騒動にバツが悪くなったのか、記者会見の晩に読売新聞の記者が一緒に酒を飲んでいた、と朝日新聞が暴露した。自社の記者は同席していなかった、と無罪を主張したが、いつもはどうなのだろうか。
 100年に1度の経済危機に直面している中で、財務と金融の大臣という重責を担っていた大臣が、いつも酔っぱらっていたのだから異常事態だ。
 一方、この騒動で名をあげたのは与謝野馨経済財政相である。中川議員の財務・金融相辞任にともない、なんと3つの経済的な重責を独占することになった。経済の中枢である財政と金融の分離に、大蔵省の解体が不可欠として01年に財務省と金融庁に分割したが、この経済危機にいきなりトップが統合したのだからあきれかえる。
 国会でも民主党の菅直人代表代行の質問に答え、「菅さんに代わっていただけるなら1つぐらい代わっていただきたい」と与謝野大臣も冗談をとばしていたが、国の経済を担う3つの重大ポストを独占しているのが、ご苦労様といってヤニ下がっている場合ではない。こうした与野党の退廃ぶりは度しがたい。
 すでに自民党は首相ばかりか、後任の財務大臣・金融大臣まで使命できなくなっている。ダッチロール状態である。自民党政権の退廃と崩壊のありさまが手に取るようにわかるのは、歴史の転換を見られる願ってもないチャンスだ。しかし市民生活への悪影響が心配である。
 この混乱状況で比較的まともな立ち回りを演じているのが、なんと死刑大好きで朝日新聞から「死に神」と呼ばれた、鳩山邦夫総務相だ。かんぽの宿のオリックスへの譲渡に猛然と反発、ついに白紙撤回させた。これは麻生政権が郵政民営化に批判的で、小泉内閣の民営化に疑問を呈していたこともあって、麻生・鳩山ラインで一矢報いたことにたいして、小泉は「笑っちゃうほどあきれている」と麻生を批判したが、麻生を買っていたのが小泉で、麻生は民営化に反対だったが、「賛成」といって裏では舌をだしていた。政権崩壊期は、なにがでてくるかわからない。面白い時代になった。
 かんぽの宿の問題は、大疑獄事件だ。民営化指令本部ともいうべき総合規制改革会議で議長を務めた宮内義彦の支配するオリックスに、日本郵政公社の財産である「かんぽの宿」が丸投げされるところだった。もともと税金でつくられた国民のものだ。
 この入札には最初27社が参加したが、2度の入札をへて最終的にはオリックス1社しか残らなかった。一見、公正な競争入札のようにもみえるが、2社まで絞られた段階で売却対象だった施設をいきなり外すなど、オリックスに合わせて条件を変えた不透明きわまりない入札だった。
 温泉付きフィットネスクラブとして人気の「ラフレさいたま」だけでも建設に300億円もの費用がかかっている。ところがラフレさいたまに加え、70ものかんぽの宿、東京や神奈川の社宅9物件48億円をふくめた総額2400億円の土地・建物が、しめて109億円だという。この社宅の中には3746平方メートルの土地もふくまれている、というから驚かされる。
 これこそたたき売りである。明治時代の北海道の官有地払い下げや福岡県大牟田の三池炭坑の三井資本への払い下げ、長崎の官営造船の三菱資本への払い下げなど、歴史的な不正に匹敵する事態である。歴史が繰り返されることの証明といえる。
 政治家が大資本と癒着して国家資産を「提供」する図式は、もはや日本の「お家芸」に近い。明治時代ばかりではなく、国鉄分割民営化でも繰り替えされた。東京だけではなく、大阪梅田や名古屋駅周辺の国鉄用地も安く大資本に提供された。かんぽの宿がこれだけ問題になったのは、オリックス一社に集中し過ぎたからだ。今回の問題は小泉・竹中改革の見直しだけとどまるべきではない。電電公社の民営化など、中曽根以来の「民活」も再点検する必要があろう。
 この問題でもう1つ明らかになったのは、朝日新聞の報道姿勢である。「筋通らぬ総務省の横やり」と題した社説で、朝日はオリックスを擁護。それがモノ笑いの種になっている。
「日本郵政の西川善文社長から説明を受けたが、鳩山氏は『納得できない』という。だが、理由が不明確で納得できないのは、鳩山氏の『待った』の方ではないのか。許認可という強権を使い、すでに終わった入札結果を白紙に戻そうというのなら、その根拠を明示する責任はまず鳩山氏にある」(『朝日新聞』09年1月18日)
 さらに1月15日には、「適正な手続きも大事だが、利用者からすれば、オリックスのもとで施設が再生し、使い勝手がよくなるなら何も問題はないはずだ」との記事も配信している。
 つまり決まったことに、とやかいうなという姿勢だ。これでは政治的な疑獄や不正をチェックできない。ジャーナリストとしては最悪の記事である。宮内を擁護する論文が、これだけ堂々とでてきたのは朝日新聞の裏側のヤミをうかがわせる。同時期の毎日新聞が「売却などの際の手続きを国民に広くしめし、そのプロセスもできる限り公表することが望ましい」(09年1月20日)と社説で主張していたのだから、そのちがいは歴然だ。
 ちなみに経済人に滅法弱いことで有名な日経新聞は、09年1月9日の社説で「所管大臣が入札結果に堂々と介入するのは常軌を逸している」と、朝日と大連合の砲火を浴びせた。小泉改革の戦犯竹中平蔵は、09年1月19日の産経新聞で臆面もなく、「民営化に当たっての基本精神に反するものであり、かつ政策決定のプロセスそのものに大きな弊害をもたらすものだ」とし、「今回の発言は、郵政の価値を棄損し、政策決定を族議員と官僚に有利にする効果しかもたない」と弁明している。
「改革の敵」だといい放てば、世論が沸騰する時代は終わった。小泉改革のバケの皮がはがれだした。米国が発表する「年次改革要望書」が郵政民営化の実現を求めていたことは広く知られている。今回のかんぽの宿の問題でも、外資企業の暗躍が報じられた。施設売却の財務アドバイザーとしてメリルリンチ日本証券がかかわり、最低6億円の成功報酬を支払う契約を結んでいたという。これだけのたたき売りに、米国資本がなにをアドバイスしたのか。
 結局、竹中も宮内も米国資本の回し者だったということだ。国民は貯金を狙われて、さらに土地・建物でも荒稼ぎを許した。その策動を朝日・日経連合も認めた。国家が危機の時代を迎えると、国を売る連中が増大する。日本が沈没していく泥沼に咲く毒花といったところか。(談)

全文は→「3.pdf」をダウンロード 

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