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2009年3月 6日 (金)

アフガン終わりなき戦場/第12回 NHKで振り回された現場の声なき主義主張(2)

 今回のディベート番組でわたしが言いたかったことは「現場のことを見てくれ」だ。保守もラディカルも結構。ただし、アフガニスタンの状況を精査しないで主義をふりまわすのはやめてくれませんか?

 私が番組の収録後に思ったのは、「言葉が通じない!」ということだった。

 酒飲みでだらしが無く、顔がイマイチなわたしではあるが、アフガニスタンの報道で一文字たりとも嘘やでっちあげを書いたことは無い。私は現場の真実だけを言っていたつもりだ。

 しかし、ディベートに参加した多くの人が私の言っていることを無視して自分の論を展開するのだ。

 アフガンやらニホンのコクサイコウケンについて議論する前に、自分たちのコミュニケーション能力に関して一席持って話し合うべきではないかと思うほどだ。ちゃんと人の話を聞いてください。現地の状況を無視して自衛隊を送るとかなんだとかはやめてください。

 私はインド洋で給油をしたり、自衛隊を派遣してアフガニスタンの状況が改善するのならばそれも一つのオプションだと思う。けれど、現場の状況はそんなことで解決する類のものではない。

 番組終了後、自衛隊派遣を主張する人たちの意見についてもう一度考えてみた。彼らにとってアフガニスタンの人がどうなろが、知ったこっちゃ無いのだ。そこに自分たちと同じような人間が暮らしていると考えていない。もしくは、意図的に考えないようにしている。

 なるほど、自衛隊を送ればコクサイシャカイに認められて日本の評価が上がり、発言権を強めることもできるかもしれない(私は懐疑的だが)。けれど、どうしてそのためにアフガニスタンの人が、日本の評価を高めるためのダシに使われなければならないのか。どうして日本の評価のために、軍隊まで送られなければならないのか。

 逆に日本にどこかの国が自分たちの評価を得るために軍隊を送ってきたら嫌でしょう。少なくともわたしはごめんこうむる。外国の軍隊が自分の家の周りを装甲車で走り回っていたらそれは不快だ。肉親や友人が殺されれば、わたしも復讐のために尽忠報国の義士になって、ゲリラ戦をしかけるかもしれない。

 アフガニスタンの状況はまさにそれで、外国の軍隊がいるから反感が育っているのだ。現在、タリバンと呼ばれている人たちは2001年末まで政権にいた「タリバン」ではない。本家のタリバンは弱体化し、パキスタンの北部辺境州にまで追いやられている。現在テロリズム・アタックを仕掛けているのは「新しいタリバン」ともいうべき、空爆の被害者たちだ。

 「新しいタリバン」は本家のタリバンとあまり関係が無い。彼らは空爆された村の若者たちで、5~10人の少数のグループで、ハクがつくからタリバンを名乗っているだけだ。「新しいタリバン」は本家のタリバンよりはるかに過激だ。本家のタリバンの最終的な目標はアフガニスタンの奪還だから、自らの評判を落とすような過激なことはまずやらない。政治工作にも時間を使う。けれど、「新しいタリバン」は純粋な復讐者だ。評判も政治も知ったこととではない。近年、カブールでもいきなり外国人が撃ち殺される事件が多発しているが、これは「新しいタリバン」の仕業だと思われる。本家のタリバンなら誘拐し、政治的な取引につかうだろう。

 こんな状況のところに自衛隊を送っていったい何ができるのか?

 ということを私はNHKの番組で口角泡飛ばしてがなりたててきたのだ。右に思われようが左に思われようが、もう知ったことではない。矢でも鉄砲でももってこいだ。

 かくして自衛隊派遣という国益に反対する国賊の出来上がりだ。左に思われたのか、最近めっきり仕事が減っている。

 ディベートの中にはアフガニスタンを訪れた人が何人かいた。NGO関係者、義足を作ってアフガニスタンに送っている人、アフガニスタン人とのハーフの人。彼らはすばらしい意見を述べた。私のように無神経ではないので、あまり多くは語らないが、美しく力強い言葉を述べた。

 彼らの多くには私の意見が突飛だとは移らなかったようだ。ある東部で活動するNGOの人から「よくぞ言ってくださいました」と言われた。

 私の言っているようなことは、アフガニスタンに少しでも行ったことのある人には自明のことなのだ。アフガニスタンのことを話すなら、アフガニスタンから考えないと。(白川徹)

 

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