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2009年2月17日 (火)

●サイテイ車掌のJR日記/人身事故発生、しかし車内は…

○月×日
 立春が過ぎた。
 といっても暦の上でのことでまだ冬だ。2月にふぶくことの多い田舎ではまだまだ油断ならない。
 でも、これまではいくら暖かい日でも春の「は」の字も出てこなかったのに、この日を境に、少しでも陽気がいいと「春だなあ」と感じてしまうのだから不思議なものだ。それは、暑さが和らいでいく立秋にもいえることだ。
 こんなことを感じるのも年を取った証拠なのだと思うとちょっとさみしくなってしまうが、そういえば、私は元々、季節や気象に対する思い入れが強いのであった。ああ、腰が痛いこと。それと、右肩から腕にかけてもジワジワ痛くて、服の袖を通すのも歯を磨くことすら大変なのだ。

 閑話休題。1月の中央線の人身事故は10件を超えた。3日に一度の割合だが、首都圏で人身事故のない日はないといってよい。出勤すれば、やれ山手だ、東海道線でだと、必ずどこかしらで起きている。昨日14日もまた中央線であったから、今こうして書いているのだが。
 私達車掌は人身事故の情報が無線から流れると直ちにその旨のアナウンスをしてお客さまにお知らせするわけだ。
「ただ今、○×駅で人身事故が発生いたしました。この先、途中駅で運転を見合わせます。あらかじめご了承下さい。詳しい情報が入いり次第お知らせいたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」。
 お客さまの中には時間に余裕がなく移動している人、この事故で今後の予定を変更せざるを得なくなってしまった人など様々だろうが、まったくもって困った事態であることは誰もが認めることだろう。
 その上で、最近の車内事情はというと、全体的に反応が小さいということを感じるのだ。皆すっかり慣れてしまったのだろうか。「ああ、またか」といった雰囲気で、まるで他人事のようにクールで醒めている。全体的におとなしいと思うのは私だけではないはずだ。
 以前なら、もっとどよめいたものだった。驚きと動揺と困惑で車体が一瞬ぐわんぐわんと揺れたほどだった(ホントかよ)。本当です。しかし、今、それがない。
 中には、「ナヌッ~!!」とあからさまに声を上げてキョロキョロと落ち着きを失う人もいるが、ほとんどの人は無言だ。ただ静かなため息と共に隣にいる見ず知らずの人の顔をそっと盗み見てはホッと安堵しているような様子なのは、この事故による思いを共有しているということをカクニンできたからなのか。とにかくじっとしているといった具合なのだ。
 また、「どうなっているのか」「いつ動くのか」と以前は車掌にひっきりなしに聞きに来たものだが、これもチラホラでしかない。
 ま、この点は私達も気休めになっていいのだが、そんな悠長なことをいっている場合ではない。定時で帰れなくなる。食事時間がなくなる。夜勤なら寝る時間がなくなる等々。私達はこれが仕事だからと言ってしまえばそれまでだが、お客さまはもっと深刻であるということは重々承知しているのであり、何よりもお客さま第一で誠心誠意の対応を心がけておりますので、その辺のところはあしからず。
 いずれにしても、人身事故をなくさない限りは話にならない。でもなくならない。柵などの防止策では効果はなく、ホームなどの構造面からいっても現時点では無理だろう。だが、山手線の何駅だったか、試験的にホームと線路の間に仕切を設けて二重扉にする(一部の地下鉄にある)との話は聞いているが、それを首都圏に広めるとなれば大変だ。設置にあたるホーム強度などの耐久性も問題であろうし、何よりも莫大な設備投資だ。
 それとも、主要駅に限定するのだろうか。
 ん? まてよ。なんぞや、いったい。不慮の転落防止策なのであり飛び込みだけではないにしても、自殺の主要駅ってあるのかい。
 とにかく、実現には何年、何十年先かわからない話なのだ。
 命を断ちたい人の事情もあろうが、大迷惑この上ないのだよ。う~む。いい考えは思い浮かばぬが、そんな人は鉄道以外にしてほしい。他の所を選んでよ。た、頼むから……。(斎藤典雄)

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サイテイ車掌のJR日記」カテゴリの記事

コメント

毎日、お仕事ご苦労様です。私も偶然このページに出会い、毎回楽しみにしています。車掌さんは大変な仕事ですね。私にとっては今もなお、憧れの職業です。もしも生まれ変わって男性に生まれてきたら、鉄道関係に携わる仕事がしたい…。特に鉄道マニアと言う訳ではないけれど、職業として惹かれるものがあります。

投稿: | 2009年2月17日 (火) 03時53分

コメントありがとうございます。今では女性の車掌も多くなりました。是非JRへ!!

投稿: 斎藤 | 2009年2月18日 (水) 12時21分

最低ってじゃあ、そんなにまで安っぽいものなのかぁ……それとも、っておもったな。ふつう最低って、最悪の無条件なまでのおもしろさなんだけど……、或いは宗教の発露って、そこにこそ在るんだって、ふつうはかんがえるのでしょうけれど。
なんで、音楽や映画にナーバスにさせられるのでしょう。それは自己存在に深くかかわっているのだからでしょうね、けどよっぽどアレじゃない限り、他人のつくったそんなもの、己と全く関係ありませんよっていう自負から、報道というものが産まれたんじゃないかしら。
けどアマで、ここまでだらとも逡巡させられた。脱力感で、新たな表現を探しているのだとしたら、この記事は防腐剤が確かりしていて効いているとおもう。
普通ジャナリ屋に読者が金払ってまで希求しているものは「おくりびと」のような本質的に陽のあたらない、けれども普遍的な、防腐剤のききまくった世界観なんじゃないのかなー。私感はいらないでしょう、事実で説得、得心させるものであって、あたしは拠点無く根無し草気取りの彼氏自慢の50女ですけれどアッパラパー垂れ流しにしてその実、自己顕示欲390%でおもったなぁ。あたくし馬鹿で、自分に信用置けないから語尾にネなんてつけてしまって、だったらせめて、虎の尾を借りない、この土俵にダブルOさんの如く才媛の玉稿を並べるのもあれですけど。それを端的一言で、自慢という。タイトルからして、って、甘ったるさを━━。
要するに、反感買わない言葉をつかうことだって言いたいのです。誠実は美しいとおもうのです。あと、素人に毛が生えた程度で、語尾を過去完了で占めるのもどうなんでしょうかジャナリ屋のマイナーストリームとしては……。
編集長さんのウィット、大畑さんのハッタリのない誠実さ或いは奥山さんのヒューモア、そういうのが読者のこころをうつんだっておもいます、じゃなきゃジャーナリストのアンチ偽善は決して打てないし、マイナーポエットはないでしょう、決してヒューモアはひとを笑わせることでもない、むしろヒューマニズムというのは絶望99パーの連中に、絶望の中の光をみせつけてやることでしょう、言葉というのは概念の結実ですからウソの象徴であって、そういう謙虚さが必要だ、ハッタリや顕示や少女特有の自負と昂揚は人の心に届かなくするだけに過ぎないんでしょうね、月刊「記録」の良さは、大手には決してできない軽はずみと誠実さと才能です。一文一文が当然、勝負なんでしょう。

投稿: 岡林かのっち | 2009年2月22日 (日) 06時03分

こんにちは。不謹慎な話、マニアな自分は輸送障害も嫌いではありません。
しかしそれでも今朝は困りました。ポイントの鎖錠をするのに40分もかかるとは。
さて文中の「慣れた人身事故」のお話ですが、10年程前の人身事故ブームの頃は運転再開に少なくとも1時間~1時間半ほどかかっていたかと記憶しております。
最近ではJREの(指令の進歩は大きい!)努力の結果、45分で事故当該編成が移動、60分で運転再開が基本パターンになっています。しかも駅でドアを開いて待つ。(機外停車と駅での抑止は心理的な圧迫感が全然違うものですから。)もちろん斉藤さんがおっしゃるように慣れも大きいのでしょうが、「1時間くらいまあしょうがないか」と多くの旅客が考えるようになったことも、また大きな理由のひとつかと利用者の1人として考えています。

投稿: pod | 2009年2月23日 (月) 20時38分

podさん、コメントありがとうございます。機外がなくなるなど、何でも少しずつ良くなってはいますが、事故とのたたかいが無くなることはないでしょう

投稿: 斎藤 | 2009年2月25日 (水) 06時06分

岡林かのっちさん、いつも読んで下さりありがとうございます。私には勝負などという大それた気持はありませんから

投稿: 斎藤 | 2009年2月25日 (水) 06時17分

斎藤さんの記事、毎回おもしろく読ませていただいています。上記の、酔っぱらっていてグダグダなうえに書くところ、完全にまちがえてしまいました。すなわち
「ところで、~ネ!」
ばかりが、得意満面なうえに凡庸きわまりなく、どうしようもなく……。記者と執筆者の方全員、個性的で良いです。月刊「記録」ここに在り、という自負が輝いている印象です。おしなべて各記事、率で4割はヒットしている感で、流石プロ、セミプロ集団だなと感心させられています。

投稿: 岡林かのっち | 2009年2月26日 (木) 23時24分

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