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2009年2月22日 (日)

日曜ミニコミ誌!/情熱と実験の果てに『つみほろぼし』

 「自由と進歩」の建学精神をもとに、「自立型人材」の育成を教育理念に掲げている法政大学。同学のサークル「嗚呼!! 情熱実験つみつくり」には、まさに自由・自立の精神が溢れている。白衣に身を包んで興味あるテーマの実験を行い、検証をしてレポートにまとめ、冊子『つみほろぼし』にして学内に配布するのが、彼らの活動だ。このたび『つみほろぼし』を読む機会を得、内容をより詳しく知りたいと感じ、サークルから会長・前代会長・会員3名・OB1名に参加していただき、お話を伺った。

奥山(以下O):「嗚呼!! 情熱実験つみつくり」というのは、全体がサークル名なんですか?

前代会長(以下Z):そうです。サークルの創設者が、辞書を引いて好き勝手に決めたサークル名です。ただ、「嗚呼」はあらかじめ決まっていました。「ああ」だと、50音順サークル一覧で一番はじめに配置されるでしょう。創設メンバーは3人、結成から10年。OBと現役メンバーをあわせると25名ほどの所帯になっています。

O:企画と実験理念を立て、そのための実験方法を作って皆で実験するというのが活動ですよね。例えばHPに「人は見た目が9割実験」がありますが…

OB:『人は見た目が9割』(新潮社新書、竹内一郎)という本が売れた頃の企画です。大学の規制が厳しくなり「不審者に気をつけよう」と言われることが多くなったので、大学が言う不審者とは? どういうことをすれば、不審者として認定されるのか? という企画のもとでの実験でした。各自ヘンな格好をして大学界隈を歩きました。スキンヘッドでサングラスとスーツで素振りしてるとか。

Z:これは「危ないから」と通報され注意を受けたので、今度はバントでそっと素振りをしてみました。そうしたら怒られなかったので、バントは「安全だからセーフ」という検証が出来たと。

会長(以下K):大学当局の放送って他にも面白くて、「歩き方に気をつけよう」とか。

会員M(以下M):横に並んでじゃまにならないように」とか「食器をきちんと片付けましょう」とか、「ボランティアをしましょう」とか。

Z:本来なら自発的にやるはずのボランティア行動を強制されているような気がしてならない。そんな疑問から「ボランティアをやる気のないものがすると、どのような結果を生み出すか」という企画を実験したこともあります(「アンパンマン的、あまりにアンパンマン的実験」:『2008年自主法政祭号』)。「実験主義」「権威打破」「情熱をカタチに」という三大理念があって、笑える企画を行う上でその3つを満たさなければならないんですが、抽象的な常識や権威を皮肉ろうというのが権威打破。これが3つの中で一番大きいんですね。プラスもう一つの要素が入って、「結局ショボい」というのも大事です。最新科学に基づいたアプローチではなく、自分たちで出来る範囲でやると。毎年やっている「年末恒例ママチャリレース」も、車ではなくママチャリを使うことで拝金主義的な世の中に問いかける。徹底的に現地集合・現地解散というのもポイントです。旅行サークルなどでは現地に行くまでの行程も含めて楽しむのが目的といえますが、我々は実験を目的とするサークルなので、あくまで現地で集まる。

O:夕張や宮崎など、かなり幅広い範囲で実験をされていますね。

Z:実験は出来る場所を限定したくないんです。火星でも実験できるのが、本来は理想的です。

M:情熱主義の一環です。情熱があればどこでだってやれるんだぞ、と。夕張集合の時は集合まで3日くらいかかっちゃいました。その間一人で野宿して。お金がないから特急とか乗れないし。

O:特に印象的な実験は?

K:太平洋戦争中にとられたジンギスカン作戦を現代風にアレンジした実験がありました(「2007年自主法政祭号」)。実際の作戦のルートであるミャンマー~インドに掛けて、富士から出発して家畜を連れて歩き、腹が減ったら捌いて食べながらインド大使館を目指すというものです。生きた羊が手に入らないので、鶏を2羽ペットショップで買いまして。それを捌いて食べて、その時のトリ鍋以外は、ゴハンなしと。でも、雌鳥って食用じゃないんですね。全然旨くなくて。ダシも鶏冠も美味しかったけど…。結局はリタイア者を出しながらも無事たどり着きましたが。

M:最近では大晦日のママチャリレースですね。25日に法政大学を出発して、他の参加者のタイヤの空気を抜いたりガムテープ巻いたりして妨害しながら、今年のゴールである広島まで走りました。この人(会員H)はちっちゃい自転車に薄着でベスト着て、原宿にでも行くような格好して参加したんですよ。

O:その格好は企画のために?

H:いや、普通にナメてて…。寒かったですね。

会員T:私はいつの間にかバイパスに乗り上げてしまって、トラックとトンネルの壁とに挟まれながら自転車をこぐという怖い経験をしました。どこまで行っても下道が見つからないので結局警察を呼んで助けてもらったんですが、保護のためUターンされてしまって。「せっかく走ったのに…急いでるのに!!」と、悔しい気持ちで一杯でした。あとは野宿してる間に財布を盗まれたり、携帯電話が使えなくなってしまったり。1日2回連絡をしなきゃいけないんですけど、できなくて「Tは死んだ」という噂が流れたりして…。

M:私は二人乗りで行こうと思って、美容学校生がよく持っているような首だけのマネキンを白衣を付けた銀マットの上に載せて、それを荷台にのっけて走りました。

O:年末年始に誰も里帰りしないでそれをやると…。

 体力的にかなりキツそうな実験ばかりだが、今回参加してくれたMさん、Tさんは華奢な女性。とても広島までチャリで走っていくようには見えないが、実験に対する情熱の強さが彼女らを駆り立てるのだろうか。会長は春休みも意欲的に実験を行っていくと宣言してくれた。内容は次号のお楽しみだ。

■権威をうっかりちょっぴり本当に打破してしまって冊子に掲載できなくなった実験もあるとのこと。実験レポート集『つみほろぼし』は、学内無料配布の形態をとる。最新号は「2008年自主法政祭号」、1000部が出ている。バックナンバーの一部を新宿模索舎にて販売、一部200円。交流のある京都大学吉田寮にも少々配布している。お問い合わせはつみつくりホームページにて。(奥山)

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