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2009年2月 8日 (日)

ホテルニュージャパン火災後の廃墟/第26回 浴室に残る高級ホテルの名残り

20a_6  浴室の写真だ。まず目にはいるのは割れた洗面ボウルだろう。よく見ると残っているボウルにも大きな亀裂がはしっている。
 この破壊の原因を推測させるのが、写真の右端に写っているバスタブ用の蛇口だ。壁に黒く残っている筋は水の跡。蛇口の中に入っているパッキングが熱で溶け、屋上の貯水タンクが空になるまで水が漏れ続けたのだろう。
 同じことが洗面台でも起こった。熱せられた洗面ボウルに水が噴き出し、いきなり冷やされた陶器が爆発的に割れたと推測される。よく見ると洗面ボウルを支えていた鋳鉄製のアングルも根元に近い部分でポッキリと折れている。その破壊の衝撃のすごさが、こんなところにも表れている。
 意外なのは浴槽が原形をとどめていることだ。プラスチック製のポリバスなら溶けてしまっているはずで、金属の表面にガラス製のうわ薬をつけて焼き上げたホーローの浴槽だったのだろう。オープン当初は高級ホテルとして内装にもこだわっていたことが、こうした備品からもわかる。
 そうした高級ホテルの「名残り」をホテルニュージャパンの建築に詳しいKBさんが教えてくれた。
「洗面の左上に丸い出っ張りがあるのがわかりますか。これはウォータークーラーの跡です。ニュージャパンのウォータークーラーは、現在主流となっている自立式ではありませんでした。中央に冷却装置を設置し、殺菌・冷却した飲料水をポンプで循環させ全館に供給していたのです。洗面台の蛇口とは別に、専用の配管から冷水が専用蛇口からグラスに注ぐシステムでした。冷水栓と呼ばれていたんですよ。焼け跡の写真では、その専用蛇口を撤去し、穴を塞ぐための化粧プラグがはめ込まれています」
 各部屋にウォータークーラーが付いていたのだから豪勢な話だ。おそらく経費削減の中で消えていったのだろう。そうした経費削減が、結局33人の命を奪ったのである。(大畑)

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コメント

偶然 こちらに立ち寄り興奮気味で全て読ませていただきました。 東京に住んでる訳でもないのに、以前からニュージャパン火災について調べたりしていました。 火災前のカラー全景やロビーの写真しか見たことなかったので感激です。 ホテルニュージャパンからは浮かれていた経営者 日本の甘さ、また古きよき昭和を感じるのは間違いでしょうか? これからも楽しみに読ませていただきます。 頑張ってください。

投稿: 多香子 | 2009年2月10日 (火) 00時36分

洗面ボウル一つで雰囲気がガラっと変わりますよね。

投稿: 洗面ボウル | 2009年6月14日 (日) 11時13分

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