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2009年2月 6日 (金)

ロシアの横暴/第10回 大学科目の80%以上がマルクス関連!?(下)

 ところで、ソ連には異色の大学があった。ルムンバ大学とマルクス・レーニン大学である。ルムンバ大学は主にソ連友好国のエリートたちがモスクワでロシア語と社会主義を学び、故国の発展を担う人材を育てることになっていた。日本からも旧社会党関連で留学していた人がいるようだ。マルクス・レーニン大学はその名の通り、マルクス・レーニン主義を学ぶ大学である。こちらは共産党幹部の子弟で、どちらかといえば「あんまり学問は得意でない」者が入学する。共産党幹部のご子息がまさか11年の基礎教育だけで終わるわけにもいかず、さりとて大学には入れそうにない、入りたくない「ぼくちゃん」たちの受け皿大学であった。学問はあんまり好きでもないのにとりあえず大卒エリートとして扱われる。といっても人材としては使い道がないので、高給「マドギワ」となる。ちなみにペレストロイカにはじまるソ連ロシアの改革劇のなかで、良きにつけ悪しきにつけ活躍した人物の中にマルクス・レーニン大学卒業者はいない。
 テレビでまことしやかに「80%は・・」としゃべっていた女性はおそらくここの大学出身だろう。もっとも悪意はなく、ほんとうに自国ソ連の大学教育カリキュラムすら知らない、おめでたい人である。
 ロシアは共産主義を打倒したから当然のことながらこの大学は現存しない。
 かわりに国立大学のほとんどが、ソ連同様崩壊し、マルクス・レーニン大学化している。共産党幹部の子息ならだれでも入れたように、金さえ払えばだれでも大学に入れる。出来の悪い学生は有料の特別授業をふっかけて金をせびる教員たちの上得意となる。もちろん単位取得も金次第だ。少し前までは試験成績が優秀ならば授業料無料枠にに入れたが(他の国にはあんまり例がない変わった制度である)、最近ではどんなに優秀でも賄賂を払わなければ大学には入れないようになってきている。
 こうして大学を終えた者が社会に出たとき自分の学力の低さをだれのせいにするだろう。世界的な経済恐慌になりそうな今、ロシアを見限って投資を引き上げた西側諸国のせいにしそうな気がする。「ロシアが混沌としていた時に見捨てた西側」と。ソ連を解体したエリツィンやプーチンがやり玉にあがる可能性もなきにしもあらずだが、勉強を怠けた自分自身に矛先を向ける日は来そうにない。
 なにか問題について「客観的にものごとをみて総合的に判断する」マルクス・レーニンの教えは正しいと思うが、どこかで配線をまちがえたようだ。結果、なんでも他人のせいにする、原因をほかに求めるソ連式ものの見方考え方は、ソ連が崩壊しても途切れることなく今も続いている。(川上なつ)

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