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2009年1月10日 (土)

●サイテイ車掌のJR日記/年頭に寄せて

○月×日
 年が明けた。
 風もなく穏やかな日々が続いている。日陰は寒いが、日向にいれば太陽のぬくもりが感じられて暖かく、体が随分と楽だ。どこまでも澄み切った青空を見ていると、暴風雪に凍えながら泣いたり笑ったりしたふるさとを思い出す。分けてやりたいよ、この天気を。

 今年は、というと、これといった夢や希望、目標、期待などは何もない。ただ、何事も平穏無事であってほしいと願うだけだ。
 もうバカはしない。むちゃはしない。自分一人の力では何にも出来ないことはよく分かっている。
 若い人たちにもついていけない。波長がどうも合わないのだ。すっかりオヤジと化してしまったようだ。
 冬は温泉に限る。昨日は箱根で、今日は草津だ。そんな気分になれるのだから、いいね、やっぱり。入浴剤は。
 これからは、他人に迷惑だけはかけないように、隅っこで慎ましく生きていこうと思っている。
 そんな中でもいくつかの感動に出会うはずだ。それは小説だったり音楽だったり。のんびりゆったりと過ごし、時の経つのも忘れさせてくれるような夢中なひとときがほんの少しでもあればいい。本当にそれだけでいい。
 そりゃあ辛いこともあるだろう。でも大騒ぎはしない。だいたいがちょっと辛抱すれば何事もなかったかのように済んでしまうことだ。平常心で対処していけば万事オーライだと思う。

 JRは年中無休で営業している。365日フル回転だ。従って、私達にも正月休みはない。でも、そんなことはもう慣れっこで、愚痴をいうのもアホらしい。私も相変わらず東京と高尾を行ったり来たりだが、中央線は元日に八王子で、2日にも新宿で人身事故があった。元日に人身だなんてこれまでに記憶がないが、中央線だものな、こんな事もありだろう。
 乗務は乗り出したら2時間以上もトイレに行けないことはざらなので、体調だけはしっかりと整えなければならない。そして、早朝だったり夜だったりの毎日違う出勤時刻までにキビシク出勤をする。
 1秒進んでいるだの遅れているだのの時計の整正などの厳正なる点呼を終えると乗務開始となる。
 発車番線を間違えないようにホームに出場する。信号を確認して時間で電車を発車させる。次駅に着けば停止位置を確認してドアを開ける。お客さまの乗降に注意する。時間が来れば再び信号を確認して発車させるの繰り返し。
 たまには時間を間違えたりでハッとすることもあるが、そんなこんなで30年。たいしたことではないよ、何もかも。

 嫌な仕事でも我慢出来るのは、それ以上の黄昏に身を置こうが解放をも許してくれる今夜のウィスキーが待っているから。枕を並べて安らかに眠ることが出来るからだ。いくら打ちのめされても何もかも忘れさせてくれるのはこの2つだろう。
 愛があれば仕事は出来るよ。愛さえあれば何があってもへっちゃらだという時期があったでしょうよ、おぬしにも。

 しかしね、あんまりの荒模様にだけはなってほしくない。勘弁してよと心底思う。こうした平凡な毎日にこそ感謝をしつつ、本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
(斎藤典雄)

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コメント

はじめまして。
かなり偶然このページに出会いました。
2作目を初めて手に取ってから斎藤典雄さんのファンで、このコメントができることがとてもうれしいです。
こう書けばお察しでしょうが、業務中ご迷惑をおかけするマニアの1人です。
マニアの目には、最後部に陣取り1日電車に乗っていられる斉藤さんは、最高の幸せ者に映るのですが、かなりつらそうな記事。既刊の作品中ともトーンが変わったよう。
三鷹から豊田に移って(八王子運輸区のマニア車掌に三鷹は全員豊田になったと伺いましたが合っていますか?違っていたらすみません)何かが変わってしまったのでしょうか?
自分は豊田に生まれてずっと16年住んでいまして、なかなかいい街だと思いますが三鷹には負けるのでしょうか?
にしても1日、2日の人身事故は今年の行く先不安。1日の指令さんの対応も疑問。やっぱりJR内部は接客意識が薄い。でも現場はそんなことないから、車掌さんや駅員さんが苦労されているんでしょうね。
そんなお忙しい中でしょうが、お返事をいただければ、成績に悩む高校生にとって至上の幸せであります。
最後に自分が感動した小説を。
東野圭吾の「手紙」。
重い小説ですがおすすめします。
つたないコメント、失礼しました。
最後までお読みいただけたなら、ありがとうございました。

投稿: pod | 2009年1月11日 (日) 00時27分

コメントありがとう。とっても嬉しいです。トーンが変わったのは単なる年のせいですよ。東野さんの作品はひと頃むさぼるように読んだものです。手紙はベストかもね。10代は一生に及ぼす影響大です。ますます見聞を広めて頑張って下さい。帰省で返事が遅れました

投稿: 斎藤 | 2009年1月13日 (火) 16時43分

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