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2009年1月19日 (月)

書店の風格/第27回 東京堂書店

 神保町のマドンナが三省堂書店であるとすれば、東京堂書店はすずらん通りの博識おじさん、と言うことが出来るかと思う。しかもその博識ぶりは全く嫌みがなく、スタイリッシュで、粋だ。
 ひととおり古書店や新刊書店を満喫してから東京堂に入れば、その品揃えに引っかかりを覚えるのは読書家だけではないと思う。豊富、確かに豊富だ。しかし何かが違う。他の新刊書店ではせいぜい棚に挿すだけであろう専門的な本が、平積みで並んでいるのだ。凝った美しい作りの専門書は、それだけで一風変わったディスプレイとして成立しうる。他では見られない様々な本の「顔」が、東京堂書店の独特な雰囲気を保っているのであろう。

 一階は新刊、文庫、新書等が並んでいる。間口が広く奥行きのない空間のせいか、どこかおっとりとした佇まいだ。入り口を踏んですぐ、店内を一望できるような錯覚に陥るのは、すぐ正面に位置した本棚だけが2段低く作られているからであろう。空気の抜き方が非常に上手と言える。
 「話題の新刊」の棚は、貪欲に様々な本を読み込もうとする読書人にふさわしく、平積みだけでなく棚挿し(すべて2~3冊ずつ並んでいる)で楽しめるような構成をしており、文芸書あり、エッセイあり、ノンフィクションあり、思想書あり…一種バイキングのような様相を呈している。独立した島になっているので、お客が夢中になりながら棚の周りをグルグルまわる様子が何となく面白い。私もその一員だが。

 2階がたいへんユニークだ。階段を上がるとすぐにマニア垂涎の稀覯本棚、お買い得棚が並ぶ。さらに紀田順一郎、坪内祐三、鹿島茂と、文化人がセレクトした本がひしめく棚が面白い。ほかにも全集もの、著者にこだわったコーナー…一階よりももっと色濃い「東京堂」色を出している。
 この階には東京堂出版のコーナーもある。辞書や歴史物、民俗学など学問的で堅実な本の宝庫だ。なぜかマジックものが多いのも興味深い。

 3階は地方小出版、リトルプレスコーナーだ。2007年11月に閉店してしまったが、長年、地方・小出版流通センターのアンテナショップだった「書肆アクセス」を引き継いだ、丁寧な作りの棚が魅力だ。さらに「立花隆棚」がある。立花氏本人の書籍は勿論、読書人として名高いご本人が選ぶ本はジャンルが多岐にわたっており、読み応えの感じられるものばかり。

 この書店のお眼鏡にかなう本を作るのは、出版社全ての目標であろう。弊社でも3月に読書人向けの本を出す(予定)。「話題の新刊」としてウィンドウにのぼる日の来るよう、頑張らなければ。(奥山)

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