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2009年1月29日 (木)

アフガン終わりなき戦場/第10回 十分な水がケシ栽培をなくしていく(2)

 闇夜の中で発電機がうなり声をあげている。ジャララバードでペシャワール会の宿舎だけが闇の中でポツンと明かりを放っている気がする。電気が供給されるのは月に一度あるか無いかだ。
 電気式の飯盒からは、日本米の瑞々しい蒸気が上がっている。日本から持ち込んだのではない。試験的に栽培したところ、豊作になったそうだ。住民も日本米をおいしいと、大喜びだったそうだ。テーブルにはご飯と生野菜とアフガン風の煮付けが並んだ。
 中村医師は農業がアフガニスタンの基盤と言う。国民の約90%が農民のアフガニスタンでは不作が生活に直結し、治安の悪化を招く。食えないから武装勢力に参加することもある。タリバンをなど武装勢力の増大につながっているのだ。やせた土地では麻薬の原料になるケシの栽培が盛んになる。ケシは武装勢力の資金源となり、戦闘がさらに悪化していく。ペシャワール会が水路を建設した周辺にケシ畑は一つとして無い。十分な水があれば小麦や米の栽培が可能であり、わざわざケシ栽培という「やばい橋」を渡る必要がないのだ。
 食後、中村医師は煙草を燻らせながら、話した。現地でも売っている日本製のたばこだ。
 中村医師は現在のタリバンを「日本の攘夷運動のようなもの」と言う。アフガニスタンでは外国軍と戦うことを肯定的に見る動きが強い。30年近く外国の干渉により戦禍に巻き込まれてきたアフガニスタンでは外国人に対する憎しみは強い。
 そんな中、日本への支持は極めて高かった。「以前は日の丸さえ付けていれば安全だった」という。日本がアメリカの作戦に協力しているということは殆ど知られていなかった。しかし、近年給油法案の騒ぎが現地でも報道されたため、感情にかげりが見えてきたという。
 昨年12月給油法案延長が再可決された。中村医師は同法案に対して「ナンセンスの一語に尽きる」と言う。
「空爆をする油が日本からのものだと分かればいい気分ではないでしょう。アフガン人の思いはもう支援も軍隊もいらないから、人を殺すのをやめてくれ、というのが正直なところでしょう」
 中村医師は「何をしてはいけないかを考えるべきだ」と言う。自衛隊を出せないから給油をする、という問題にすり替えては本質を見失う。現地で何が求められているかを知ることが重要だという。
 現地の状況は軍隊を送れば解決するというレベルではなく、もう国レベルでは成す術がないほど混乱している。しかし、ペシャワール会などNGOは、活動範囲は狭くてもゆっくりと現地に安定をもたらしている。武装勢力は減り、人々は安定した生活を取り戻しつつある。
 昨年の8月武装勢力に殺害された伊藤和也さんもここにいた。彼もここで中村医師と語り明かしたのだろうか。伊藤さんはアフガニスタン派遣の志望動機でこう書いている。
「子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています」
 伊藤さんの目指したものやペシャワール会の活動にこそ、アフガニスタンの平和と本当の意味での「テロとの戦い」の勝利があるのではないだろうか。(白川徹)

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