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2008年12月24日 (水)

赤字予測を隠れ蓑に世襲を決行するトヨタの本末転倒

トヨタ自動車が09年3月期の決算予測(通期)を赤字と下方修正して豊田章男副社長を新年度から社長に昇格する旨を明らかにした。そうか。そう来たか。

「帝王学」を授けられた創業家の「御曹司」に「大政奉還」する(おいおい)

……ということらしい。いったいいつの時代の話か。今は21世紀だよ。という批判はかねがねあって古色蒼然たる「大政奉還」なる行事への批判はトヨタ外に多かった。非上場の同族企業ならばともかく「世界のトヨタ」が封建時代さながらの世襲をするとは、と。当然の批判である。それを経営大ピンチの時にやってのけた。世間の目がトヨタ赤字に行くすき間を縫ってやってのけた。こうなると赤字見通しの方が手段で世襲が真の目的だったのではと勘ぐりたくなる。日本中の企業マインドを凍りつかせるトヨタ赤字のニュースをおとりにして世襲というちっぽけな目的を果たすなど許されざる行為だ。
どさくさ紛れに世襲という例では1997年の第一勧銀をめぐる事件で当時の田中賢二社長が逮捕されて岡田卓也会長の長男の岡田元也氏がトップに就任したジャスコ(現イオン)が思い浮かぶ。でも卓也氏は実質的な創業者だからなあ。だからいいというわけではないけどやはり創業者は別格だ。
それに対して豊田家は豊田佐吉・平吉兄弟以来の系図をひもといてどこの誰が系列の何になったかを調べられるほど世襲にこだわる。直系だけで勘定しても佐吉→喜一郎→章一郎→章男と4代だ。

実はトヨタ社員が誇りを持つほど、この世襲に意味はない。まず佐吉から喜一郎への伝承。天才発明家であった佐吉の自動織機事業を喜一郎が手伝った形跡はあっても喜一郎を事実上の創業者とする自動車を佐吉が企図していた痕跡は見あたらない。この「伝説」の裏付けを私はずいぶん前から探していたものの今日まで佐吉が喜一郎へ「次は自動車だ。お前がやれ」と促した痕跡がないのだ。佐藤正明さんもない旨を書いていた。
次に喜一郎は自動車創業者であっても経営者として正しく評価されているか。過大評価ではないかという疑い。「戦争が間にあって不幸でした」「急死しなければ」などと擁護論が聞かれるが戦争はトヨタだけに災いしたわけではないし、急死の直前に彼は労働争議を収めるのにしくじっている。
自動車としてのトヨタを上昇させたのは遠縁の石田退三と豊田英二であろう。英二も豊田家ではないかというも彼は平吉の次男で直系ではない。そんなことにこだわる自体がナンセンスというのは世襲反対論にある側で豊田家をありがたがる封建派は英二が傍流というのが納得いかないに決まっている。ご存命の英二氏にそう言えるトヨタ社員は誰もいないだろうけど。
では直系3代目の章一郎氏は何をしたか。英邁な経営者だったのか。大変疑問である。そもそも章一郎社長が誕生した1982年は念願の工販合併記念年だった。この時にも「大政奉還」の文字が躍った。で章一郎氏は何をした?

「トヨタショック」が手段で世襲が目的ではないかとの疑いは今回の赤字見通しの正体とも密接にからむ。利益1兆円を超える化け物企業になったのは今世紀に入ってから。さあその頃のトヨタ指導者は誰でしょう。大もうけの実態は意図的にたくらんだ円安と借金漬けのアメリカのバブル経済。うち前者を希求した財界人で当時の政界に強い影響を与えたのは誰でしょう。どんどん首を切られている派遣社員を製造業まで認めた労働者派遣法改正は04年。それを大いに叫んだ財界人は誰でしょう。そして一線を退いても最後のご奉公として「大政奉還」のお膳立てをしていたとうわさされる御仁は誰でしょう。答えは○○○さん、ですねえ。みんな。

今回のトヨタショックにしても無理矢理円安とアメリカのバブルというイケナイ要因が単に調整されて平常化しただけではないのか

世襲などばかげているのはもはやいうまでもない。五島家も堤家も松下家もやめた。同じ愛知県でいうならば松坂屋は最近までそうだった。伊藤様こと伊藤次郎左衛門を代々襲名すると聞いて高校生頃の私は「いまだにあるんだ!」と絶句した記憶がある。それも1985年の鈴木正雄会長による「クーデター」で幕を閉じた。高村光太郎の詩を借りていうならば「トヨタよ、もうよせこんなことは」だ。世界の恥である。(編集長)

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コメント

トヨタはいらない。どこでも外国に出て行け。昨今の態度はなんだ。国の保護も忘れてやりたい放題。
トヨタはいらない。
早くケイマン諸島でも行け。

投稿: 加田 宏 | 2009年1月28日 (水) 10時59分

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