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2008年12月28日 (日)

鎌田慧の現代を斬る/第127回 労働者を放り出すトヨタと救おうともしない麻生

 製造業で世界最強最高の利益を誇っていたトヨタも減産に入った。そのためトヨタ系自動車の工場での期間工の大量解雇がはじまっている。トヨタ本体では先に2800人の期間労働者を削り、さらに3000人を削減する予定だ。トヨタの子会社でも非正規労働者のクビ切りが相次いでいる。アイシン精機は300人、豊田自動織機は500人のリストラを9月末までにおこなった。また日野自動車、関東自動車でも、1000人規模の解雇が予定されている。
 下請け企業の発注も激減しているため、下請け・孫請け企業では、派遣・期間工ばかりか社員労働者の解雇もではじめている。乾いたぞうきんでも絞るトヨタは、コスト削減を下請けや孫請けに押しつけてきた。最近では海外進出も拡大し、部品生産のための施設拡張を下請けにも強制してきた。それが一転、発注が減ったからと仕事を削る。おかげで設備過剰をつくらされた下請け・孫請けは倒産の恐怖にさらされている。
 似たような話は1970年代にもあった。マンモスタンカーの需要が増大し造船景気にわいた造船業界は、マンモスドッグを乱造した。しかし景気は後退、建造したドッグに閑古鳥が鳴いた。このとき三菱重工の経営者は「まるで酒にでも酔っぱらったかのように設備投資した」と語った。トヨタもおなじような酔っぱらい経営をしたことになる。過大な需要見通しによって設備投資を増やし、その責任をいっさい負わず、ただ下請け・孫請け切り捨てて生き残ろうとするトヨタ自動車にたいして、もっと批判の声があがっていい。それでいて、内部保留は22兆円もある。それを吐き出して、人の命を救え。
 労働者軽視の姿勢はF1撤退問題でもあきらかになった。ホンダは不況によるF1撤退を決断したのに、トヨタは残り、年間500億円ともいわれる維持費を払いつづけるという。その理由としてトヨタ幹部は次のように語っている。「表彰台の真ん中にたたないと参戦した意味がない」(『朝日新聞』08年12月6日)。
 モータースポーツにたいする熱い思いからではなく、ただトップであることを見せつけたいがために、労働者を切ってもF1は守るというのだ。トヨタは大事にすべきものを完全にまちがえている。
 トヨタの労働者切り捨ては、地方自治体にも影響をあたえている。12月5日の中日新聞では、ホームレスになった派遣社員たちが名古屋近隣の地方自治体に相談に押しかけ、名古屋市のホームレス自立支援施設を紹介されているという。
 その理由を同紙は次のように報じた。
「従来、自動車製造業を中心に求人が活発で、ホームレスも少なかった三河地方の各市は、受け入れ施設が未整備のまま。『今晩泊まるところがないという方が相談に来ても、ごめんなさいと言うほかない』(豊田市)というのが実情だ」
 これは自治体の不備ばかりを問うわけにはいかない。というのも豊田市は失職した約100人を臨時雇用する方針まで打ちだし、トヨタの大リストラに対応しているからだ。むしろ問題なのは、自社で集めた労働者をいきなりクビを切ったトヨタだ。近年の法人税の値下げや輸出企業に有利な税制による消費税の大幅な減額など、税金分をしこたま会社に蓄えたのだから労働者の面倒ぐらい自分でみるべきだ。自治体に押しつけるな。
 トヨタが09年3月期連結決算で営業赤字になると業績予想を下方修正した12月24日の前まで、黒字予測にもかかわらず大リストラを実施するトヨタに世界のマスコミが殺到した。その取材者の1人、イタリアテレビ局「SKYTG24」のピオ・デミリア極東特派員は、トヨタの対応に腹を立て、わたしに電話をかけてきた。名古屋にでむいたのに、トヨタがまったく対応しなかったという。
 いうまでもなく企業には社会的責任がある。自社の宣伝のためにメディアを使うだけではなく、都合の悪いことにも誠実に答える義務がある。ところがトヨタは答えたくなければ取材をシャットアウトし、気に入らない論調なら広告をエサに圧力をかける。こうした国際性のかけらもない、会社の閉鎖性は恥ずべき事だ。
 トヨタは世界中の工場で失業者を生みだしているだけでなく、国内でも派遣労働者だった日系ブラジル人やベトナムから来ている研修生などをホームレス状態に追いやっている。つまり自社に国際問題を抱えているわけだ。広報だけ閉鎖的でよいはずはない。
 好況のときには世界中から労働者を集め、いったん販売が減れば情け無用とばかりに解雇するトヨタの体質は人間性の欠陥というべきものがみえる。利用するだけ利用してお払い箱にする人の扱い方が秋葉原事件をうみだしたのに、まったく反省がみられない。
 2006年1月には経団連会長だった奥田碩氏は、「多少の不平等は、社会の流れの中で当然出てくる。餓死者や凍死者が出れば国家として対策も必要だろうが、今はそうなっていない」(『産経新聞』06年1月11日)と、死に直面するまで低賃金労働者は放っておけ、とでもいいたげな発言をしている。このような思想こそトヨタイズムである。
 このままでは困窮した労働者たちがどうなるかしれない。早急に対策を立てるべきだ。トヨタが動かないなら、それを指導するのが政府の責任だ。(談)

全文は→「1.pdf」をダウンロード

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