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2008年11月16日 (日)

日曜ミニコミ誌!/第7回文学フリマに行ってきた

 本来ならば今日は月に一度の「冠婚葬祭ビジネスへの視線」の日である。しかし「日曜ミニコミ誌!」としてこのイベントの報告を載せないわけにはいかず、さらに連載名じたいが日曜日のアップを強制しているため、小松さんにすごい勢いで平謝りし、この日を譲っていただいた。

 「文学フリマ」とは文学限定の同人誌即売会で、2002年に始まった。今年で7回目になる。文学フリマホームページの「理念」に「既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表できる「場」を提供すること、作り手や読者が直接コミュニケートできる「場」をつくることを目的としたイベントです」とあるが、アマプロ問わず同じ幅のブースを与えられ、同じ立場で売り手になっている光景を目の当たりにすると、「文学ってまだまだ元気になれるのかも?」と感動すら覚えた。
 ブースは売り子が二人座れる程度のスペースが与えられ、役150団体が参加していた。10時半から開場を待つ人の列に加わったが、既に50人程度が並んでおり、最初から熱気を感じさせた。11時に開場すると、100人程度になった列がゆっくりと動き始め、30分後には超満員に。コミケの身動き取れなさには負けるが、「文学」と名のつくイベントでこれだけの大盛況振りを見たことがないだけに、驚きが絶えなかった。男女比は作り手が男性6割の女性4割、お客が男性9割の女性1割といったところ。いつも思うのだがこの手のイベントはどうして女性が少ないのだろうか。筆者自身、書き仕事をしているとよく男性に間違われることとあわせて疑問である。

 会場では講談社の主宰する「東浩紀のゼロアカ道場」の関門としての同人誌販売も行われていた。若き批評家たちが冊子の販売数を競うのだ(詳しくはこちらのHP参照)。ざっと立ち読みしたあとに投票的に一冊買ったのが、『ケフィア』(project1980)。関門としてもトップで通過したようだ。フォントの小ささにまで熱意がこもっているこの雑誌、とくに「ゼロ年代的広告論」が出色の出来ではと感じた。個人的に興味がひかれたのは「擬似同期化するファッションの世界」。いつもは話題の外にある批評家たちのファッションについて、内輪的に語っているのが面白い。同人誌にしかやれないことだろう。

 筆者の狙いは、2階でも独特の空気を放っていた一列。名づけるなら「オンリーワン」な一群だ。コンセプト、企画ともに「文芸」「批評」「コラム」などに分類できない、いわば世界に一つ(多分)の専門誌を作る人々のブースである。
 本連載で紹介させていただいた方々の出品から見ると、ミニコミ界では有名な『野宿野郎』が新作『風呂なし野郎』を販売。文字通り「住んでるところに風呂がついてない」人々が送る風呂私生活の数々は、不思議と悲壮感を出しておらず、むしろそれを楽しんでいるかのように見える。コンセプトとしての「野宿」とのつながりが垣間見えた。フリーペーパー『愛情通信』も新作(vol.20)が出来立てで、いつもながら生活に根付いたレポートが面白い。「計画生活」という記事中では、帰宅してからのスケジュールに「ゴミ拾う(20こ)」という記述があり人目もはばからず笑ってしまった。さらに同じ「愛情通信」のブースでは『スケベなのは悪いことじゃない』というフリーペーパーを配る女性がいて、新たな「オンリーワン」の可能性を感じた。そして『どくろく』(武蔵野ヘルスセンター)は中央線の車窓から発見した小さな変化などを紹介するフリーペーパーをまとめた『週刊車窓』を販売。中央線利用者なら誰でも心当たりのある(しかし他人との会話には絶対にのぼることのない)話題満載だ。そして他にも様々な表現者たちと知り合えた。順に本連載で紹介をさせていただければと思う。

 今年の流行語大賞にもノミネートされた誌名を持つ『ロスジェネ』ブースでは、作り手たちがかわるがわるに店番をし、活発なオーラを漂わせていた。秋葉原での事件を扱った論評が主題の増刊号は、作り手も買い手も20代後半~30代が多い(見渡した限り)文学フリマでこそ、販売する価値があろう。同年代性を大事にした誌面づくりも「オンリーワン」だ。

年々参加者の数を増しているという文学フリマ、次回は来年5月に開催される。「私(俺)だからこそ作れる同人誌」が、もっともっと増えていくだろうことが嬉しく、楽しみだ。(奥山)

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